2006 Fiscal Year Annual Research Report
ポルフィリン面上に構築した静電場を利用するプロトヘム酸素錯体の合成
Project/Area Number |
18750156
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中川 晶人 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (20348858)
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Keywords | ポルフィリン / 酸素錯体 / ヘム |
Research Abstract |
本研究は、遺伝子工学的または有機合成化学的手法を用いて、ポルフィリン面近傍に種々の置換基を導入し、水中で酸素配位できるヘムを合成するとともに、その酸素結合能と置換基構造の相関を解明することを目的とする。平成18年度は、軸塩基配位子を導入した遺伝子組換えヒト血清アルブミン-プロトヘム複合体(rHSA-heme)について、酸素結合部位近傍のアミノ酸の構造、位置と酸素結合能の相関を解明した。また、ポルフィリン環に電子吸引性置換基を直接結合したヘムの合成法を確立し、その酸素結合能を評価した。 (1)rHSA-hemeの構造と酸素結合能の相関解明 rHSA-hemeにおいて、ヘムの酸素配位座近傍に位置するArg-186をHisに変換すると、ビスヒスチジン6配位鉄(II)低スピン錯体が得られた。186位置が、ヘム鉄第6配位座最近傍にある重要アミノ酸だとわかった。そこで、186位置へ疎水性のLeu、Pheを挿入すると、酸素親和が約1/3に低下した。これはヘムポケットの疎水性が強まり、酸素解離速度が増大したためである。 (2)ポルフィリン環に電子吸引性置換基を直接結合したヘムの酸素結合能 Friedel-Crafts反応により、4-カルボキシブタノイル基をポルフィリン環2-位置へ導入、そこへ軸塩基配位子を結合させる新しいヘムの合成法を確立した。Vilsmeier反応に比べて、軸塩基配位子を短工程数で導入できた。得られたポルフィリンの可視吸収スペクトルにおける極大吸収波長は、電子吸引性置換基導入前に比べて赤方シフトした。これは、ポルフィリン環の電子密度が減少したためである。しかし、その酸素親和度は、類似のイミダゾリルアルキル基を有するヘムとほぼ同じであった。アシル基1つの導入では、酸素結合解離速度への影響が小さいこと、さらにスペーサー部の構造が、その配位を安定化したと考えられる。
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