2006 Fiscal Year Annual Research Report
燃料電池用ポリエーテル系電解質と膜電極接合体に関する研究
Project/Area Number |
18750167
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
宮武 健治 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 助教授 (50277761)
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Keywords | 燃料電池 / 高分子電解質 / プロトン伝導 / ポリエーテル / 膜 / 膜電極接合体 |
Research Abstract |
芳香族ポリエーテル電解質の分子構造を詳細に検討した。まず、優れたプロトン伝導度と安定性を両立させることを目的として、分岐・架橋構造の導入を試みた。1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)スルフィド、1,3,5-トリス(ブルモメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、トリメチロールエタンをそれぞれ2mol%添加した系において、イオン交換容量(IEC)が1.0〜2.6meq/gの電解質膜電解質を得た。酸化安定性試験前後において、IECにはほとんど変化が見られなかった。重量はIECが2meq/g以上の膜で低下しており、2.5meq/g以上の膜はほぼ完全に分解溶解した。また、分子量はIECに対してほぼ直線的に低下する傾向を示した。これらの結果より、酸化分解はスルホン酸基が置換しているフルオレニル基部位ではなく、ポリエーテル主鎖において優先的に起こっているものと考察できる。親水性のヒドロキシラジカルはスルホン酸基近辺を攻撃しやすいにもかかわらず、エーテル結合を含む主鎖を攻撃しやすいことは、炭化水素系電解質膜における酸化分解がヘテロ結合(特に非共有電子対を有するもの)から起こることを示唆するものである。次に加水分解安定性試験では、IEC、重量とも全ての電解質膜においてほとんど低下しなかった。分子量は高IEC膜(>2.5meq/g)の一部において若干の低下が認められたが、他の膜についてはほとんど変化せず、極めて高い安定性が確認できた。これらのことから、酸化・加水分解安定性いずれにおいても分岐架橋基の有無や構造は影響を及ぼさないことが明らかとなった。 これまでのポリエーテル電解質膜は、高湿度条件下ではフッ素系電解質膜と同程度の高いプロトン伝導度(ca.10^<-1>Scm^<-1>)を示すが、湿度の低下に従って伝導度は著しく低下した。この問題点はIECを増大させると改善することが可能であり、直鎖型(2.51meq/g)、分岐型(2.40meq/g)、架橋型(2.63meq/g)では、40%RH以下における導電率が2桁以上改善した。特に架橋型膜は、上述したように高い安定性と低い膨潤率を兼ね備えており、高温作動燃料電池用電解質膜として最も有望である。
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