2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケール電極界面における生分解性高分子の電場応答性と結晶成長性制御効果
Project/Area Number |
18750188
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
杉田 篤史 静岡大学, 工学部, 助手 (20334956)
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Keywords | 高分子物理 / 結晶成長 / 電気的性質 / 誘電体 |
Research Abstract |
今年度は、4種類の高分子鎖(ポリ五乳酸(PLLA)、ポリε-カプロラクトン(PCL)、ポリβ-カプロラクトン(PPL)、ポリエチレンサクシネート(PESu))の直流電場印加状態での結晶成長挙動について調査した。実験の結果、各試料はそれぞれことなる結晶成長挙動を示すことが明らかになった。PLLAは、陽極付近に結晶核が表れ、続いて結晶成長面が電極と平行となるように結晶成長が進行する。PCLおよびPESuは、PLLAと同様に陽極付近より結晶成長が開始されるものの、微結晶が陽極側より積層されるような形で進行した。一方、PPLの場合は、電場による選択的な結晶成長開始や結晶成長方位の制御効果は観測されなかった。結晶成長後の高分子鎖の分子量分布を調査したところ、いずれの試料とも低分子成分の含まれていることが確認された。 一連の高分子の電界中における結晶成長過程について次のようなことが考えられる。まず、直流電場を印加することにより高分子鎖は末端部分を中心に電気分解するものといえる。この分解反応によって生じた低分子量成分は、陽極に引き付ける。この陽極付近に集結した低分子量成分が造核剤として作用して核形成が生じたのであろう。これに引き続く二次成長では高分子鎖の構造的性質に大きく依存するものと考えられる。PLLAは、剛直な高分子鎖を持ち、主鎖方向にモーメントを持つ。このモーメントの電場による配向分極効果が結晶成長方位を結滞したのであろう。これに対して、PCLでは構造の剛直性は低いため、配向分極効果も低く、その結果結晶成長方位への制御効果も小さかったのであろう。PESuの場合には、そもそもモノマーが対称構造を持たないため、主鎖方向のモーメントは働かない。PPLにおいて何故電場による結晶成長性制御効果が観測されなかったかについては現在検討中である。
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Research Products
(3 results)