2006 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギー重イオンが誘起するプラズマがシングルイベント効果へ及ぼす影響
Project/Area Number |
18760056
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
小野田 忍 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 博士研究員 (30414569)
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Keywords | シングルイベント過渡電流 / プラズマ / イオントラック構造 / TCAD / 高エネルギー重イオン |
Research Abstract |
従来の集束型重イオンマイクロビーム(6〜18MeV)に加え、コリメート型重イオンビーム(数百MeV)を新たに開発し、PIN型フォトダイオードに発生するシングルイベント過渡電流(SETC : Single Event Transient Current)を計測した。平成18年度は、イオントラック構造がSETCに及ぼす影響を明らかにする目的で、イオントラック形成からSETCに至る各過程の精密なシミュレーションに取り組んだ。イオントラック構造に関しては、従来の円筒状の分布ではなく、デルタ線のエネルギー損失を考慮し、実際の現象を良く再現するKatz理論を用いたイオントラック構造シミュレーションを実施した。イオントラック形成後のキャリア伝播挙動に関しては、Synopsys製のデバイスシミュレータ(TCAD : Technology Computer Aided Design)を用いた。この結果、数百MeVの場合、(1)アンバイポーラ拡散とドリフト電流の和、(2)アンバイポーラ拡散と拡散電流の和、(3)ドリフトと拡散電流の和、(4)拡散電流、によってSETCが構成されていることが分かった。これは、十数MeVと比較して複雑な過程を経てキャリアが収集されることを示している。十数MeVの場合、アンバイポーラ拡散電流とドリフト電流のみでSETCが構成されている。この違いの原因は、イオントラック構造に由来すると考えられる。エネルギーが高い場合、プラズマが長く、その半径が大きくなる一方、その密度が数桁低くなる。実際の宇宙環境に存在するGeV級の高エネルギーイオンに対しても数値解析を進めた結果、GeV級ではアンバイポーラ拡散電流はもはや流れず、ドリフト電流と拡散電流のみがSETCに寄与することをはじめて明らかとし、本研究課題である『高エネルギー重イオンが誘起するプラズマがシングルイベント効果へ及ぼす影響』に関する研究を着実に推進した。
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Research Products
(2 results)