Research Abstract |
本研究の目的は,強誘電・強弾性材料のドメインスイッチングに起因する材料非線形挙動を多結晶構造レベルからシミュレートできる有限要素解析手法の開発である.これを目指して,本年度は,以下の2点について研究を行い,成果を得た. a)従来の有限要素定式化と異なり,汎関数を最小化するタイプの有限要素定式化を行った.この定式化では,電気に関する方程式がcurl-curl型となる.この型に対しては,辺要素を用いる必要のあることが分かっている.よって,弾性体に対する通常の節点要素と,この辺要素を混合した四面体1次要素を開発し,3次元問題における性能検証を行った.また,この定式化を行う際に不明確なままであった電気的な境界条件について,これを明確にした.その結果,本手法は電気に関して応力法的な取り扱いとなっていることからも想像できるように,制約として電極ごとに等電位でなければならないこと,また電極以外の境界面には表面電荷が生じてはならないこと,の2条件を課す必要のあることが分かった. b)上述の汎関数を最小化するタイプの有限要素定式化と相性の良い構成則モデルとして,ランダウの現象論的モデルを採用した.これは物性物理学において一般的に用いられているものであるが,従来の有限要素定式化とは相性が良くなかったため,計算力学の立場からはあまり検討されていない.そこで,本モデルのうち簡潔なものを2次元有限要素に組み込みいくつかの検討を行った.本モデルは系に対する自由エネルギの存在を仮定した上で,その安定性について議論するものであるため,これと有限要素解析と組み合わしたものの数学的構造は,構造物の分岐解析におけるそれと類似する.よって,分岐解析における経路の探索手法等を流用し,強誘電・強弾性の多結晶セラミックスを千自由度程度で要素分割したものに対して経路追跡を行えることを確認した.
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