Research Abstract |
本研究は,大きく分けると,メゾスケール解析モデルの構築,ナノスケール解析による特性評価,従来手法による解析との比較,検討,実用材料の解析への応用と検証,の4段階で構成しているが,初年度においては,まずメゾスケール解析モデルの構築について,フェーズフィールドモデルに基づいた基礎式の導出を行った.固液界面エネルギーや,結晶粒界エネルギーなど,既に用いられている界面エネルギーに加え,弾性ひずみエネルギーや塑性変形に伴う散逸エネルギーなど,力学的エネルギー項を考慮した導出によって,相変態・温度・応力の連成関係を考慮した解析が可能となった.この基礎式を用いて,デンドライトや多結晶体など,複雑な形態をもつ凝固組織形成過程の解析を行い,微視組織内部に生じる応力変化や残留応力分布を再現した.これらの組織形成過程においては,核生成から結晶粒成長および粒の衝突による粒界形成によって,複雑な応力が発生することを示した.また,ナノスケール解析による特性評価として,分子動力学モデルによる解析を行い,結晶粒界の形成と,その安定性についての考察を行った.静的な粒界エネルギーの評価では,界面を形成する結晶方位による粒界エネルギーの異方性が生じ,特定の方位関係をもつ粒界が低いエネルギーを持つことを確認した.また,動的な粒界形成シミュレーションでは,粒界近傍の原子を一旦融解させ,再凝固させたときに形成される粒界の構造について検討した.この解析によって,安定な粒界構造は,粒界をなす2結晶の方位差に強く依存することを確認した.
|