2006 Fiscal Year Annual Research Report
自己修復膜生成制御による切削工具の摩耗抑制法に関する研究
Project/Area Number |
18760110
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田中 隆太郎 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (60361979)
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Keywords | 切削加工 |
Research Abstract |
本研究では,高速対応型快削鋼としてBN添加鋼を使用し,超硬工具を用いたBN添加鋼の旋削加工を行い,工具-被削材間への微量通電が行い被削性に及ぼす影響について検討を行った.その結果以下の結論が得られた.超硬P30を用いた旋盤加工において,最大20mAの工具-被削材間へ微量通電を行った場合, (1)切削時の工具摩耗は工具-被削材間の電流により影響を受ける.電流量が5mAを超えるとそれ以下の場合と比べすくい面摩耗の明らかな減少が見られた. (2)逃げ面摩耗は電流量が10mAまではほぼ同じ摩耗量を示し,さらに電流量が増加すると摩耗が増加する. (3)通電切削時において切削点に窒素ガスを噴射すると未噴射時と比べ,逃げ面摩耗が大幅に減少し,すくい面摩耗がやや増加したが,窒素未噴射で電流量が小さい場合のすくい面摩耗と比較するとその摩耗量は小さい.低切削速度では酸素の吸着が増加するとFeを主成分とする安定な付着層が生成され切削状態が安定するとの報告もあるが,本研究は比較的高速で切削温度が高いことから被削材の凝着も少なく,過度の酸素の吸着は酸化摩耗などの工具摩耗を促進させる可能性も考えられ,摩耗抑制に大きく寄与するとは考え難い.このことから微量通電が切削中の工具表面において窒化物系保護膜の生成を促進させることにより工具摩耗が抑制されたと考えられる. (4)通電により切削抵抗が低下した.被削材の凝着が起こりにくく,BN添加鋼切削時に工具表面に生成される窒化物系保護膜との親和性が高いとされる工具ほど切削抵抗の変化が少ない. (5)工具-被削材間へ流れる電流は工具逃げ面温度へほとんど影響を与えない. このように,この手法は工具と被削材,切削雰囲気の適切な組み合わせが選択出来れば,ドライ加工において工具寿命を大幅に延長することが出来る有効な手段のひとつとなり得ると考えられる.
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