Research Abstract |
近年,関心が高まっている省エネルギーや環境保全の対策の1つとして,流れの遷移,剥離,抵抗,流体音,伝熱などの自在な乱流制御手法の確立が期待されている.本研究では,大気境界層や航空機などの高速輸送機器周りなどの実現象に近い形状でかつカノニカルな体系として,壁が存在する外部流,すなわち乱流境界層を対象とする.本年度の研究業績は以下の通りである. 1.超並列計算コードの開発 地球シミュレータを用いて乱流境界層の世界最大規模の直接数値計算を行った.具体的には,効率の良い超並列計算コードを開発した.並列化には,すべてのスーパーコンピュータで同様に使用できるMPIという並列化手法を採用した.すべての計算ノードの計算量が等しくなるように設定し,またノード間で転送するメッセージ量を減少させることにより,高い実行性能を得ることができた.高レイノルズ数かつ,広い計算領域,及び長時間に亘る計算を行った.その結果,非制御時の高精度の各種乱流統計量を取得した. 2.乱流摩擦抵抗のモデル構築 高レイノルズ数流れにおいては,摩擦抵抗増大の要因となる大規模乱流構造の力学機構など未解明な問題が多く存在する.本計算から得られた境界層のデータと,既存の平行平板(チャネル)間ポアズイユ乱流,クエット乱流のデータとを比較し,以下の知見を得た.流れの形態に依らずに大規模構造は壁近傍からチャネル中央,又は境界層の上部まで広く存在している.しかし,大規模構造のスパン方向サイズ(Λ)は異なることが分かった.ポアズイユ乱流,クエット乱流,境界層乱流において,それぞれΛ≒1.2δ,5δ,2δである.大規模構造は壁近傍の乱流場に影響を与えている過去の研究結果より,この影響は流れの形態に依存することが示唆される.また,このΛを用いたレイノルズ数により,流れ場に依らず壁近傍の乱流統計量を整理できることが分かった.
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