Research Abstract |
近年脚光をあびている多軸制御工作機械は,工具の位置と角度の両方を制御でき,インペラのように複雑な形状の加工には必要不可欠であるが,その加工精度が低いのが課題である.その理由のひとつに,制御系設計法が確立されていないことが挙げられる.本研究は,多軸制御工作機械の大幅な高精度化を実現するための制御系設計手法を提案することを目的として行っている.本研究で取り組む課題は大きく分けて,(1)多軸制御工作機械の制御系設計法の提案と実験による検証,(2)旋回軸系の動的挙動解析とモデル化,(3)重力による影響のモデル化と補償,(4)ピッチ誤差や摩擦などの非線形要素の補償,及び,(5)モータのトルク飽和を回避する多軸制御方法の開発の5つである. 今年度は,まず実験装置に旋回テーブルとその角度を測定するためのロータリーエンコーダとを追加し,任意の制御則を適用可能な制御装置により駆動できるようにした.その装置を使い,多軸制御工作機械送り駆動系の制御系設計法の提案と,実験による検証とを行った.その制御系設計方法は,部分的モデルマッチング法により速度制御系を設計し,その結果から位置制御系とフィードフォワード補償器とを設計するものである.実験とシミュレーションにより有効性を確認したところ,提案した制御系設計方法により直進軸と旋回軸の同期精度が大幅に改善されることがわかった.また,直進軸における摩擦力の影響を補償するための摩擦補償器の開発にも成功した.しかし,フィードフォワード補償器を適用することでモータトルクの飽和を招きやすくなるという問題点が生じ,今後の課題となっている.並行して旋回軸系の挙動解析とモデル化を行った.その結果,ウォームギヤのピッチ誤差,バックラッシ,およびアンバランス質量が挙動に大きく影響することがわかり,それらの補正方法を検討する必要がある.
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