Research Abstract |
近年,高齢者の人口が急速に増加している.高齢者は,一般に加齢に伴い筋力が低下するため,自力での歩行が可能であっても疲労しやすい.また,本人は普段通りに歩いているつもりでも,疲労するにしたがって歩行時の足の位置,角度などが変化していくため,わずかな段差であってもつまずきやすくなる.このような歩行機能低下時の転倒事故により,自信喪失および介護者を必要とする状態に陥るケースが多い.そこで本研究では,高齢者およびリハビリ患者の自立生活の支援を目指すため,歩行支援装置を開発した.従来の各研究機関で開発されている,装着して使用する関節駆動式の歩行および動作支援装置の支援する関節は,歩行時に特に大きな関節モーメントを必要とする膝関節や股関節である.しかし,長時間歩行では,足関節の背屈動作を行う前脛骨筋に疲労が現れ,これがつまずきの原因となる.また,従来の装置の多くは足に縛り付けて固定して使用し,圧迫感や違和感があった.以上の状況より,本研究では,足には固定せずに,膝関節や股関節だけでなく,足関節までを含めた下肢全体の歩行支援をする動的歩行補助機を開発した.また実機により装着実験を行い,筋電測定によりその効果を確認した結果,以下の結論を得た. 1.装置を脚部に固定せずに,足裏から持ち上げるように下肢全体を支援する歩行支援方式を提案し,試作機を製作した. 2.長周期歩行時の脚部の筋活動を測定したところ,立脚期はRF, SO,遊脚期はBFL, TAが活発であった.また,MVC比は,TAが最も高く,大腿部は20%以下と低かった. 3.装着時の筋電を計測したところ,遊脚期ではTA,立脚期ではRFの筋活動が約60%に低減しており,歩行支援効果がみられた.
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