2006 Fiscal Year Annual Research Report
スピン機能材料の結晶成長プロセスに関する第一原理シミュレーション
Project/Area Number |
18760227
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 良雄 東北大学, 電気通信研究所, 助手 (10361198)
|
Keywords | 結晶成長 / 表面・界面物理 / 計算物理 / 半導体物理 / スピンエレクトロニクス / 第一原理計算 / デバイス作製プロセス / 電気伝導計算 |
Research Abstract |
Coベースのフルホイスラー合金Co_2XY(X-=Cr,Mn,Fe,Y=Al,Ga,Si,Ge)は高スピン偏極材料(ハーフメタル)の1つであるが、その高い強磁性転移温度作製プロセスの容易さから注目を集めている。実験的にはCo_2MnSi/Al-O/Co_2MnSiの磁気トンネル接合に対して低温でのトンネル磁気抵抗(TMR)比が570%と高い値が得られており、その有用性が実証されつつある。一方で、室温ではTMRが大きく減少する結果が得られている。実験におけるTMR比の大きな温度依存性にはさまざまな要因が考えられるが、その1つとして絶縁体との界面近傍におけるフルホイスラー合金の酸化の影響が考えられる。そこで本研究では、フルホイスラー合金/絶縁体界面における酸化の影響について理論的な検証を行った。計算には、ウルトラソフト擬ポテンシャル法による電子状態計算とランダウアー公式をベースとした電気伝導計算を用いた。Co_2MnSiとMgOとの(001)界面では、Co終端面とMnSi終端面の2種類が考えられる。これら2つの界面において、界面が酸化された場合の形成エネルギーを計算したところ、Co終端面よりもMnSi終端面の方が酸化されやすいことがわかった。これは、Siの結合半径がMnの結合半径よりも小さいことに起因して、界面でSiの原子位置がCo側へ移動し、そこにできた隙間に酸素が入りこみやすくなるためである。また、界面が酸化された場合の電気伝導を計算すると多数スピン状態の電気伝導が大きく減少し、TMRを劣化させる可能性があることもわかった。界面の酸化を防ぐためにはMnSi終端面を出さないようにすることが重要であり、そのためのデバイス作製プロセスとして、Co_2MnSi層を形成したのち数原子層だけCoを薄く積層する方法を提案する。この方法により、Co_2MnSi界面の酸化を防ぎCo_2MnSiのバルクの高いスピン偏極率のみを引き出すことが期待できる。
|