Research Abstract |
フィルタバンク(Filter bank, FB)は信号処理,画像処理,及び通信の分野で広く用いられている技術である[1,2].Tanakaは,フィルタのタップ数が間引き係数の2倍である冗長FBに関して,任意の分析FBが与えられたとき,完全再構成条件を満たす合成FBの一般解を閉じた形で導いている[1].今年度は,文献[1]において未解決である2つの問題に解を与えた. 1つ目の問題は,任意の合成FBを与えたとき,完全再構成条件を満たす分析FBが存在するための,この合成FBが満たすべき必要十分条件を明らかにすること,また,合成FBがこの条件を満たすときの分析FBの一般解を求めることである.2つ目の問題は,冗長FBには設計の自由度があることを利用して,帯域通過特性を持つ最適な分析FBを,係数が実数であるという拘束条件の下で求めることである. 1つ目の問題に対しては,文献[1]で得られた知見を用いることで,これを解決した.つまり,完全再構成条件を多元連立一次方程式に変換することで,解を求めた.2つ目の問題に対しては,帯域通過特性を評価するコスト関数を設定し,拘束条件の下でこれを最適化した.最適解は閉じた形で求めることができる.この最適解を用いて,帯域通過FBを設計するための交互繰り返し法を提案した. 計算機実験により本研究で議論した理論の有効性を示した. [1]T.Tanaka, IEEE Trans.Signal Processing vol.54, no.8, pp.3011-3022, Aug. 2006. [2]P.P.Vaidyanathan, Multirate Systems and Filter Banks. Englewood Cliffs, NJ : Prentice-Hall, 1993.
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