Research Abstract |
研究申請者は,インターネットにおける同報配信型サービスを効率的に実現する手法として,μSEcast(ミューズキャスト)と呼ぶ新しいパケット転送方式を考案し,PCルータへの実装を進めている.本研究課題では,μSEcastの適用領域拡大を目的としているが,平成18年度は(1)μSEcastにおける経路制御機能,(2)類似パケット統合機能,(3)TCPパケット統合機能の検討を行った. μSEcastでは,対応ルータを通過するすべてのパケットを監視し,同一データ部をもつ複数のパケットが同一方向へ転送される場合にパケットを統合して転送することで,データ量をマルチキャスト並に削減することが可能となる.広い範囲においてパケット削減効果を得るため,(1)では複数のルータ間においてμSEcastを実現する手法を検討した.まず簡単な例として,3つの拠点にμSEcast対応ルータが設置されている場合を考慮して静的経路制御を実装し,経路制御のための機能設計を行った.現在,実装に向けて準備中であり,まもなく完成の予定である.(2)では,データ部が一部異なるパケットに対してもμSEcastが有効に働くような改良を行った.具体的には,対応ルータにおいてパケットの差分を計測し,パケット統合時に差分情報を付与しておくことで,受信側ルータで元パケットを復元する機能を実装した.しかし,現在の実装はまだ完全ではなく,部分的な動作に限定されている.今後更なる検討が必要である.(3)では,TCPパケットを統合するための機能を実装した.従来のμSEcastは,UDPパケットのみを統合対象としていたが,TCPを統合できるように改良したことで,その適応領域は格段に広がったと言える.一方,TCPの場合パケットの到着順序が変化するとパケット損失が発生したと判断され,同一データの再送が行われるといった問題がある.今後はこの問題について対処する必要がある.
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