Research Abstract |
研究申請者は, インターネット上で同報配信型サービスを効率的に実現する手法として, μSEcastと呼ぶパケット転送方式を考案し, PCルータへの実装を進めている. 本研究課題では, μSEcastの適用領域を拡大し, より広い範囲で効率的なパケット転送を実現することを目的としている. 平成20年度は, (1) μSEcast対応エリアの拡大, (2) μSEcast適用対象の拡大を行った. (1) では, 利用可能領域を拡大するため, これまでIPパケットフォーマットを利用していたμSEcastプロトコルを大幅に見直し, UDPパケットフォーマットを利用した新しいプロトコルを開発した. 近年のインターネットでは, セキュリティ向上を目的として, 既知の上位プロトコルでなければ転送しないように設定されたルータが増加している. UDPパケットフォーマットを利用することにより, さまざまなネットワーク環境での利用が可能となり, μSEcast適用領域の拡大に成功した. また, ネットワークプログラミングの標準的なAPIであるソケットプログラミングを用いることにより, 異なるOS上での開発が容易となり, FreeBSDのみならずLinuxやWindowsでの動作を実現した. (2) では, 平成18年度に検討した類似パケット群に対するμSEcast適用技術を発展させ, より効率的なパケット統合を実現した. データ部の一部が異なるパケットは,相違部分を統合パケット内に保存しておかなければならず, 統合パケットサイズが増加するという問題があった. そこで, 相違部分のデータを圧縮して保存する手法を2種類考案し, 従来よりも効率的な類似パケット統合を実現した. PCルータ上に実装して動作実験を行ったところ, 従来手法を越えるトラヒック削減を実現した, また, より簡易な類似部検索方式を実現することで, 類似パケット統合にかかる処理時間を40%程度削減することに成功した.
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