Research Abstract |
鋼構造および鉄筋コンクリート(以下RC)構造は,いずれも耐久性に優れ,多くの土木構造物に用いられてきた.これらは,適切に設計,施工され,供用開始後に適切に維持管理された場合には極めて耐久性に富む構造形式であるにもかかわらず,近年その早期劣化が問題となっている. そこで本研究では,鋼構造およびRC構造の耐久性を支配する大きな要因である鋼材の腐食について,以下に述べるような点明らかにすることを目的とする. a)電気化学的側面から,鋼材における腐食の発生,進展メカニズムを正確に把握する. b)耐荷力をはじめとする機能性の低下をシミュレーションする. c)構造物の余寿命評価方法を確立する. d)適切な補修工法選定のフレームワークを確立する. 現在までに得られた結果は,以下のように要約される. (1)海洋環境に曝露した鋼材の表面塗膜の劣化は,飛沫帯よりも海中部や干満帯で激しい. (2)しかし,塗膜に傷のある場合には,飛沫帯において傷から塗膜の剥離が進展し,劣化が最も激しい.また,剥離の進展距離は,船舶や流木の衝突を想定して塗膜に与えられた初期傷の大きさに依存する. (3)塗膜の劣化はACインピーダンス法で評価可能であり,劣化が進行すると塗膜の電気抵抗値が減少する. (4)塗膜の劣化は,海中部と飛沫帯では1年以内に発生し,外見上問題が無くても電気抵抗値は減少しているため,その後の鋼材の腐食が促進される. (5)塗膜の傷周辺における母材の腐食は形成される腐食の回路が異なり,海中部と干満帯では深さ方向に,飛沫帯では母材表面に沿って進行する.
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