Research Abstract |
ゴム材料は,大ひずみ下において,速度・温度依存性や最大経験ひずみ依存性,永久変形,ハードニングなど複雑な力学挙動を示し,精度の高い構成モデルは未だ確立されていない. 本研究では,主としてゴムの有するエネルギー吸収性能を対象として,体系的な材料試験を基に,超弾性要素と複数の粘塑性要素を並列化する高精度な構成モデルを構築した. 具体的には,まず,温度・載荷速度をパラメータとし,これらに対するゴムの力学特性(応力-ひずみ関係)の依存性を把握するための材料試験を行った.対象としたのは,免震・防振に使われるカーボン補強天然ゴム5種類であり,既設の振動台を利用して単純せん断変形を与えるための装置を開発し,温風装置および冷風装置を用いて温度を制御して,広範囲な条件化での応力-ひずみ関係を把握した. 続いて,試験結果を基に,超弾性ダメージモデルと,粘弾塑性モデルを組合わせる汎用的な構成モデルを構築した.超弾性要素では,既往のOgden型準弾性モデルを用い,Mullins効果を含めた応力の進展方向を再現し,一方,粘弾塑性要素では,一次元の粘塑性モデルを変形勾配テンソルの乗算分解と熱力学の第二法則を基に有限ひずみの構成モデルに拡張し,さらに新たな等方硬化則を導入して,広範囲なひずみ域でのエネルギー吸収性能を再現している.さらに,本モデルでは,エネルギー吸収性能のひずみレベルへの依存性を表すため,粘弾塑性部の自由エネルギーに物質対数ひずみの不変量を導入することを提案し,実験結果と良い対応を得ることができた. 最後に,本モデルの有限要素法への適用を想定し,提案した構成モデルの応力積分法を示し,さらにそれに整合した接線係数を導出した.
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