2006 Fiscal Year Annual Research Report
災害避難時における群集行動形成メカニズムのモデル化とその厚生分析
Project/Area Number |
18760383
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
織田澤 利守 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助手 (30374987)
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Keywords | 防災計画 / 災害避難 / 群集行動 / 情報の外部性 / 不完備情報ゲーム |
Research Abstract |
災害避難時における群集行動形成メカニズムを説明するモデルの構築し,その成果を学会において発表した.当初計画のとおり,基本モデルとして2期間2主体モデルの定式化を行った.具体的な検討内容は以下のとおりである. 災害リスクに直面する同質な2主体が,自治体から公表される災害情報(公的情報)と独自に認知したリスク情報,及びもう一方の主体の避難行動の観察結果を基にして災害生起に関する主観的確率を形成し,避難を行うか否かの意思決定を行う状況を想定する.以上の枠紅みを不完備情報の動学ゲームとして定式化し,各住民の合理的(戦略的)な避難行動選択をゲームの均衡解として導出した.さらに,主体の異質性を導入し,様々な状況設定の下で災害時に起こる集団的な避難行動のパターン(均衡解の特性)とそのときの社会厚生について考察した. 主な結論として,1)同質な2主体の場合,両主体の災害リスク認知の精度が高い,もしくは低いならば,相手の行動を考慮することによって期待被害額が減少するが,災害リスク認知の精度が中間的ならば,相手の行動を考慮した結果かえって期待被害額が増加する可能性があること,また,2)両主体の災害リスク認知の精度に差がある場合,その差が小さいときにはやはり期待被害額が減少する可能性があることが示された. 以上の分析結果より,災害避難において人々が他者の行動を互いに観察し合う結果,一般に非常に非効率な状況が発生しやすく,公的情報の精度向上に加えて災害リスクの知識を豊富に持ち,率先して行動を決定することができる防災リーダーを日頃から育てる必要が高いことが判明した.
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