2006 Fiscal Year Annual Research Report
国際的な市場・非市場ネットワークによる動学的災害リスクマネジメントに関する研究
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18760394
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横松 宗太 京都大学, 防災研究所, 助教授 (60335502)
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Keywords | 災害リスク / リスクマネジメント / 開発途上国 / 被災地復興 / フィリピン / 中国 / 農村金融 / マイクロ・クレジット |
Research Abstract |
本研究では防災計画学やコミュニティ防災学で蓄積された知見に,国際経済学や開発経済学の視点を加えることによって,大規模自然災害被害の国際的影響について明らかにし,また国際的ネットワークを通じたりスクマネジメントの方法論について分析することを自的としている.18年度は主として,防災機能に関して市場と非市場の関係が複雑かつ未解明な部分が多く残された開発途上国を対象に,まずはフィールド調査等を通じて現状を明らかにすることを試みた.はじめに2006年2月にフィリピン・レイテ島にて発生した地滑り災害の被災地調査を行い,インタビューを通じて町や州,地方,国政府による被災後の対応について取り調べた.またバランガイ(フィリピンにおける最小の行政単位)で実施されている防災対策や,被災後の集団移住の展開を詳細に取り調べた.さらにNGOや国際NGOの実務者に対して役割や資金調達の方法についてインタビューした. 次いで中国を対象に,まずは現在の中国の災害保険市場について大規模な文献調査を行い,その結果を整理した.また中国の農村地域に着目し,近年の幾つかの制度改革が農民の災害リスクファイナンスに与える影響について分析するモデルを定式化した.1996年の農村金融体制改革では,農村信用社が自主的な経営を行える体制が築かれると同時に,農村信用社による小額信用貸付と連保貸付の供給が開始された.一方,2002年に制定された「農村土地請負法」では,農地の所有権を変えず,農家の請負権を保証するうえでの経営権の流動化を推奨することが明文化された.本研究では,それらの改革に対して,農村信用社による小額信用貸付が農民の借入機会を拡大したことは認めつつ,一方で農村信用社がそれぞれの農民に必要な額の貸付を行わないのはなぜかについて考えた.モデル分析の結果,1)土地請負経営権の取引の自由度が増したことによって,農村の農民当たりのリスクがより均質化する.2)その結果・農村信用社のように大規模な金融機関によるリスクプーリングが容易になる.3)農村信用社が小額の貸付を行い,民間金融に融資の役割を残すことによって,民間金融による農民のリスクマネジメント行動に対するモニタリング機能を利用することができるという構造が明らかになった.すなわち農地の経営権の流動化を通じて,農村信用社と民間金融の補完的効果が向上し,農村金融全体のリスクプレミアムが減少することが示された.
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Research Products
(5 results)