Research Abstract |
開発途上国では,コレラ等の水系感染症はいまだに死因の上位に位置しており,感染症の流行が経済成長を停滞させ,持続可能な発展を妨げる主要因となっている。本研究の目的は,途上国における社会基盤経済,教育,医療等の観点から社会システムの動態を考慮したリスク評価モデルを開発することである。本年度の研究実績を以下にまとめる。 1.水利用と水環境汚染に関する現地調査 メコン流域の途上国を対象として,住民が生活に利用する水(飲用・非飲用)の水源を調査した。飲用水については,飲用前に煮沸や凝集処理等の処理を行うかどうかや,1日の飲用水量についても調査した。代表的な水源(河川水,井戸水,雨水,水道水,ボトル水)では実際に水を採水し,病原微生物(黄色ブドウ球菌,腸管系ウイルス等)と指標微生物(大腸菌群,大腸菌等)の検出を行い,汚染状況を把握した。 2.社会システムレベルでの水系感洗症リスク評価モデルの構築 途上国における社会システムレベルでの評価モデル構築のため,現地における水系感染症(コレラ,赤痢,チフス等)の患者数に関する統計資料を収集した。同時に,人口指標(人口,人口密度,人口増加率,非都市域に居住する人口割合,年齢構成),生活や経済に関する指標(GDP,貧困率,就業率,諸外国からの援助受入額,清澄な水を利用できる人口割合,衛生設備を利用できる人口割合),医療・保健に関する指標(乳児死亡率,栄養失調児の割合,期待余命,特殊出生率,マラリア等の病気の患者数),および教育に関する指標(初等教育機関への就学率,高等教育機関への就学率,識字率)に関する統計資料を収集した。 次年度は,これらの水質データや統計資料を用いて,実際にモデル構築の作業を行う。
|