2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代における博覧会開催による都市の観光化に関する研究
Project/Area Number |
18760481
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
笠原 一人 Kyoto Institute of Technology, 工芸科学研究科, 助教 (80303931)
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Keywords | 建築史・意匠 / 博覧会 / 都市 / 観光化 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度までに十分な調査ができていなかった、第4回内国勧業博覧会および平安遷都千百年紀年祭の際の、京都以外の西日本各地の都市や町での観光化についての調査を中心に行った。また可能な限りで、昭和期の博覧会と観光に関する資料収集を行った。資料調査は、国立国会図書館や京都府立総合資料館、大阪府立中之島図書館などで、関連する当時の新聞資料や各地の地誌、市史などを閲覧した。 その結果、第4回内国勧業博覧会および平安遷都千百年紀年祭開催時の地方では、京都で行われたのと同様に、古社寺の修理、古社寺での宝物展、陶磁器などの展示会、史跡名勝への道路や茶店の整備などが主であり、大規模開発や都市計画的な改編は見られなかった。しかしそれらは、京都での博覧会と紀年祭に合わせて整備されたものであり、鉄道による集客を前提とした事業である。つまり1895年には、京都のみならず各地で、商工会議所などが中心となって、自主的に観光化が進められたことが明らかになった。 また、昨年度までに収集した第4回内国博および紀年祭開催時に発行された観光案内書の分析を試みた。『京都出版史』によれば京都の観光案内書の出版は、明治26年が4冊、明治27年が4冊、明治28年が33冊であり、第4回内国博および紀年祭開催に合わせて観光案内書の発行が増えている。それらの記述内容を考察すると、日本語の案内書は、京都市の中央部や東部を始点として、北東部、北部、北西部、西部、南西部、南部、南東部と、大きく左回りに案内が進む傾向が強い。英語の案内書は、中央部から始まるが、その後の記述がバラバラか、西部から右回りで北東部へ向かう傾向が見られた。これは、国内向けの案内書については、御所から始まり東山近辺を観光の目玉と捉えていることが伺える。また外国の観光客への案内方法が、国内向けとは異なっている。その意味は十分に検討できていないが、京都あるいは日本の「内」と「外」で京都への関心の持ち方にズレが見られることが明らかになった。
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