2007 Fiscal Year Annual Research Report
倉の立地から見た集落構造とその景観文化:群倉型集落を事例として
Project/Area Number |
18760490
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
黒坂 貴裕 National Research Institute Cultural Properties, Nara, 都城発掘調査部, 研究員 (70419901)
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Keywords | 建築史・意匠 / 農村計画・建築計画 / 民俗学 |
Research Abstract |
今年度は,初年度に調査をおこなった青森県下北半島,長野県松本市大野川地区,岐阜県飛騨市種蔵地区の各集落について分析をおこなった。 調査からは倉と住居が隔離された集落構造を確認した。下北半島と大野川地区については群倉型の集落と判断できるものの、種蔵地区の集落構造は倉と住居が隔離されるが,倉が集まる立地状況ではないため出倉型と判断することができた。これにより種蔵地区は,住居と倉が敷地内に建てられる庭倉型と群倉型の中間形態を示す事例であることを確認した。なお,今年度は庭蔵の事例として長野県塩尻市の土蔵を調査している。 また,調査対象地の地勢はいずれも水田耕作が可能な低地が非常に少なく,畑作を中心とした農業形態,あるいは農業以外を生業の中心としていたことが確認できた。以前に調査を行った福島県桧枝岐村においては林業と焼畑耕作(移動耕作)を生業としていたことが分かっているため,本研究の対象地においても類似した産業構造が認められる。したがって,このような産業構造が群倉型集落の形成要因の一つとなる可能性が高まった。 以上のような群倉型集落は,その形成要因を住居火災の類焼から倉(財産)を守るためと説明されることが一般的であった。しかし,本研究からは,類焼防止という要因からなる単純な集落形態ではなく,生業や地勢といった要因が絡んだ結果であることが予想される。したがって,群倉は個々の集落の独自な文化を表現する文化的集落構造(景観)と評価することができる。 次年度は,事例を増やして各集落を比較することで,群倉型集落に共通する成立要因について明らかにし,論文としてまとめる予定である。
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