2008 Fiscal Year Annual Research Report
倉の立地から見た集落構造とその景観文化 : 群倉型集落を事例として
Project/Area Number |
18760490
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
黒坂 貴裕 National Research Institute Cultural Properties, Nara, 都城発掘調査部, 研究員 (70419901)
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Keywords | 建築史・意匠 / 農村計画・建築計画 / 民俗学 |
Research Abstract |
今年度は、奄美大島大和村において現存する群倉の調査を行った。群倉の立地条件としては既に幸田(1972)によって、「(1)住家・集落から離れている。」「(2)海岸・河川・湿田の近ぐにある。」「(3)風通しの良い場所にある。」「(4)比較的に農耕地の近くにある。」「(5)農耕地に不適当な土地である。」という5点が挙げられ、場所の現況と特徴が記されているが、具体的な場所を図示していない。そこで、村内の集落において群倉がかつて所在した場所を聞き取り調査し、立地特性の分析を行った。その結果、集落によっては前述の5点のいずれかに該当しない場合もあることが分かり、その中で共通して該当するのは「(5)耕作に不適当な土地である」ことが分かった。また、墓地が類似した立地条件であることも分かった。つまり、大和村では面積の小さい集落内の平地を有効に活用した結果、もしくは有効活用を目的として、群倉が形成されたと考えられる。調査ではさらに、焼畑の存在と舟の利用も聞き取ることができ、「(2)比較的農耕地の近くにある。」については、群倉と耕作地の物理的な距離による分析ではなく、耕作地へ通う上での利便性に注目することで、有力な条件になりうる可能性を見いだすことができた。 今回の大和村の考察とこれまでに調査を行った地域を併せ、狭隘な集落の土地利用における群倉の位置付け、生業形態との関係性を明らかにした。これによりそれぞれの地域特性と景観特性について明らかにした。こうした成果により、かつての集落景観の復元に備え、未解明であった群倉について研究を深化させる道筋をつけられた。
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