2006 Fiscal Year Annual Research Report
侵入型元素を固溶させた4族および5族金属中の水素分布の観察
Project/Area Number |
18760492
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
本間 啓史 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助手 (90401801)
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Keywords | 水素透過膜 / バナジウム / 酸素 / 格子膨張 |
Research Abstract |
水素の分離・精製用材料の一つに水素透過膜があり、水素の溶解度や拡散係数が大きい4族・5族金属膜が注目されている。透過膜には使用時の差圧に耐えうる強度や水素吸収に伴う変形を抑制する形状安定性が必要である。水素原子の格子間への固溶による格子膨張に起因した透過膜の変形を防ぐため、従来は、水素との化学的親和力が低い金属との合金化により水素溶解度を低下させ変形を抑制する手法が主流であったが、同時に水素透過速度を大きく減少させた。そこで本研究では、侵入型元素を溶解させることで予め格子を膨張させておき、水素吸収に伴う変形を抑制しうるかを検討することを目的とした。 本年度は、膜材料にVを、侵入型元素に酸素を例にとり、膜材料中へ侵入型元素を導入する方法を検討した。次に、V中の水素透過速度に及ぼす酸素の影響を試料温度200〜1000℃、バルク中酸素濃度0.03〜3at%で測定した。なお、低酸素濃度領域において試料膜の水素化による破壊を防ぐため、透過実験時の上流側水素ガス圧力は0.1〜10Paと低く設定した。 厚さ0.1mmのV膜試料を筒状に加工し、その一端を溶接により封じ、他端をステンレスフランジに溶接した。これを真空装置に取り付け、600〜700℃において気体吸収法により0.03〜3at%まで段階的に酸素を導入した。表面に衝突した酸素がバルク中へ溶解する確率は0.3〜0.4程度であり、この値から酸素導入処理に要する時間が予測可能となった。また、試料は上述のような厳しい力学的拘束条件にあるものの、酸素導入時にリークの発生などは見られなかった。水素透過速度は酸素濃度の増大に伴い緩やかに減少し、酸素濃度3at%では初期値の約1/10となった。しかし、この透過速度の減少は表面反応速度の低下に起因することがわかっており、Pd被覆などの適切な表面改質により防止できると考えられる。
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