Research Abstract |
分散粒子の表面改質を要しない簡便な直接溶融混練法による有機・無機ナノコンポジットの創製を目指し,当初の計画通り以下の研究を実施した。 (1)破砕強度や粒子配列構造が制御されたナノ粒子軟凝集体の調製 平均一次粒径が12,57,100,200mmの各コロイダルシリカ水溶液を出発原料として,多孔質シリカナノ粒子凝集体の調製を行った。得られた凝集体について,電子顕微鏡による観察,水銀圧入法および窒素ガス吸着法による孔分布・比表面積等の孔構造の解析を行うと同時に,微小圧縮試験を実施して凝集体の破砕強度も測定した。その結果,溶液のpHおよび共存陽イオンの種類・濃度により凝集体を形成した時の孔構造・破砕強度が決定されることが分かった。この結果を踏まえて,研究(2)の高分子中への分散に最適な低強度軟多孔質凝集体の調製条件を決定した。 (2)溶融混練によるナノシリカと各種高分子とのコンポジット化 研究(1)にて得られた軟凝集体を,疎水性の程度が異なる複数の高分子(エチレン・ビニルアルコール共重合体,ポリカーボネート,ポリスチレン,フッ素樹脂)とともに混練し,高分子内部に発生する剪断力で軟凝集体を解砕してシリカを分散させた。まず,高分子の粘度特性を把握して,溶融混練過程で発生する剪断応力と軟凝集体の強度の関係を元に決定した混練条件を検討した。そのような条件で混練を行った結果,200mm径シリカについては,高分子の親・疎水性によらず,一次粒子レベルで均一に分散することが分かった。さらに,一部高分子については,100mm径のシリカー次粒子の均一単分散を達成し,それ以下の一次粒径のシリカの場合もナノクラスターレベル(100mm以下の大きさ)での分散を確認した。なお,分散不良のサンプルが得られた場合には,画像解析により分散の程度を定量化して,適宜その結果を新たな混練条件の決定・実験へフィードバックした。
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