2006 Fiscal Year Annual Research Report
アパタイト系セラミックスの量子構造に基づく機能設計
Project/Area Number |
18760506
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松永 克志 京都大学, 工学研究科, 助教授 (20334310)
|
Keywords | バイオマテリアル / 第一原理計算 / 格子欠陥 |
Research Abstract |
代表的な生体材料であるアパタイト(リン酸カルシウム)系セラミックスは,人骨と類似した化学組成を持つこと,生体内組織や骨と良好な親和性を有することなどから,人工骨・歯根や骨補填・修復材として期待され,さらなる特性向上を目指した材料開発や臨床実験が行われている。しかしながら、アパタイト系セラミックスの構造や物理的・化学的性質については依然不明な点が多く、さらなる高性能材料の開発を合理的かつ効率的に行うには、電子・原子レベルの材料科学的観点を応用した研究を早急に進めていくことが望まれる。そこで本研究では、第一原理電子状態計算を用いてアパタイト系セラミックスの構造と機能を理論的に解明することを目的とした。今年度は水酸アパタイトを主とした対象とし、結晶構造中のイオン空孔形成エネルギーの理論計算を試みた。高温・湿潤雰囲気における化学平衡条件から,構成元素の化学ポテンシャルを求め,空孔欠陥形成エネルギーの温度・酸素ポテンシャルなどの環境因子依存性を調べた。 高温では水酸アパタイトのC軸上に存在する水酸基とプロトンの空孔形成が他のイオン空孔形成に較べて極めて安定であることが計算結果よりわかった。これは,高温での水酸アパタイトの脱水反応に相当する。また1000K以上では自発的なイオン空孔形成が起こることが示唆された。既往の実験報告では,アパタイトの脱水反応および相転移が1000K付近で起こることが確認されており,本研究結果はこれと良く対応している。よって,水酸アパタイトのような複雑構造における点欠陥形成に対して,本研究のような理論計算が適用可能であることが確認できたといえる。
|