Research Abstract |
リチウム二次電池の負極材料として,黒鉛負極の約2倍程度の理論放電容量を持つスズやシリコン,アルミニウムを含む金属間化合物系負極材料に期待が集まっている.本研究では,金属間化合物負極へのリチウム挿入脱離反応による構造変化メカニズムと格子欠陥の相関を調べることを通じて,電極の高性能化を目指した基礎研究を行った.六方晶系B8_1-B8_2型構造を基礎とし,空孔規則配列結晶構造を有するNi_3Sn_2単結晶薄板を用いて,電気化学特性と微細構造変化との相関について調べた.Ni_3Sn_2相は組成幅を有し,組成変化に伴って格子定数および空孔規則配列が複雑に変化する.Ni_3Sn_2の六方晶母構造の底面に平行および垂直な試料について,充放電試験を行った場合,化学量論組成の試料では底面に垂直な試料の方が約2倍の高い充電容量を示す.空孔濃度の増加および格子定数の低下が見られるNi-poor組成の試料ではこのような異方性と充電容量が著しく低下する.これらの結果と,TEMによる微細構造観察の結果から,Ni_3Sn_2中ではLi原子は八面体サイトに存在していること,充電容量の結晶方位依存性は,Liの拡散速度の差に起因しているものと結論付けられる.また,充放電特性に及ぼす格子欠陥の影響を見るため,さまざまな熱処理を施したNi_3A1冷間圧延箔への充放電試験を行った結果,1次再結晶終了材,99%冷間圧延材,完全焼鈍材の順で,充放電容量が低下した.微細組織との相関を検討した結果,高エネルギー粒界,格子欠陥がLiの拡散を促進に寄与していると結論付けられる.以上のように,金属間化合物負極ではリチウムの拡散を促進するような結晶構造,格子欠陥構造の制御により,電極特性の向上が期待できることを明らかにした.
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