2006 Fiscal Year Annual Research Report
加工誘起マルテンサイトの分布を制御した耐水素脆化性高強度ステンレス鋼の創製
Project/Area Number |
18760531
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土山 聡宏 九州大学, 大学院工学研究院, 助教授 (40315106)
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Keywords | 水素 / ステンレス鋼 / 加工誘起マルテンサイト / 傾斜機能材料 / 金属物性 |
Research Abstract |
本申請課題では、耐水素脆化性に優れた高強度ステンレス鋼を創製することを目的として、傾斜組織化、すなわち、材料の表層部を安定なオーステナイト組織、内部を硬質なマルテンサイト組織とする加工熱処理技術を提案し、その確立を試みた。具体的には、準安定オーステナイト鋼のSUS304に窒素吸収処理(1200℃-1気圧の窒素雰囲気での熱処理)を施して表面近傍にオーステナイト安定化元素である窒素を濃化させた後(傾斜濃度化)、強冷間圧延により内部のみ加工誘起マルテンサイト変態させる(傾斜組織化)手法を用いた。 1.窒素吸収処理による傾斜濃度化 供試材にはSUS304の厚さ1mmの板材を用いた。まず、この試料サイズについて、拡散方程式の数値計算によるシミュレーションを行い、傾斜濃度化のための処理時間の見積もりを行った。これに基づき、窒素吸収処理を種々の時間施し、板厚方向の窒素の濃度分布(硬さ分布)を調査した結果、シミュレーションで予想される窒素濃度の傾斜化が可能であることが明らかとなった。 2.強冷間圧延による傾斜組織化 上記1.で傾斜濃度化したSUS304に圧下率60%の強冷間圧延を施し、X線回折法により板厚方向の組織比を調査した。その結果、両表面から150μmまでは安定なオーステナイト単相組織であり、それより内部ではオーステナイト:マルテンサイト=30%:70%の混合組織が形成されていることが確認された。以上の結果から、準安定γ鋼のSUS304に、(窒素吸収+冷間圧延)プロセスを適用することで、材料の傾斜組織化が可能であることが明らかとなった。
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