2006 Fiscal Year Annual Research Report
サマリウムコバルト薄膜における垂直磁気異方性の発現に及ぼす銅の影響
Project/Area Number |
18760540
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
水牧 仁一朗 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門・動的構造チーム, 副主幹研究員 (60360830)
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Keywords | 垂直磁化膜 / 軟X線磁気円二色性 / 元素別ヒステリシス |
Research Abstract |
本研究ではCuを含むSmCo_5垂直磁化膜に対して行った軟X線MCD測定および元素別磁気ヒステリシス測定を行った。試料のSm-Co-Cu垂直磁化膜はdcマグネトロンスパッタリング装置を用いて作製した。その膜構成は、Sm-Co-Cu(25nm;Cu x at%)/Cu(25nm)/Ti(25nm)/glass sub.とし、Sm-CoCu層のCu組成比の異なる3種類の試料(x=7,14,21)を用いた。軟X線XAS-MCD測定では、マクロスコピックな測定では知ることのできない、ミクロスコピックな知見を得ることができる。Co-L_<2,3>,Cu-L_<2,3>吸収端およびSm-M_<4,5>吸収端何れの吸収端においてもMCDスペクトルには明瞭なシグナルが観測されたことから、Sm、CoのみならずSm-Co-Cu層中に存在するCu原子が有限の磁気モーメントを持つことが分かった。またCu-L_3,Co-L_3,Sm-M_5吸収端のMCDシグナルの符号は、CoとCuが同符号であり、CuとSm,CoとSmは互いに逆符号である。このことからCoとCuの磁気モーメントは強磁性的に、CuとSm、CoとSmのそれらは反強磁性的にそれぞれ結合していることが明らかとなった。さらに、Cu-L_3吸収端におけるESMH曲線は、VSMにより測定された磁化曲線と類似した履歴を示し、Cu-3d電子の発現する磁気モーメントが強磁性的に振舞うことが明らかとなった。これらの測定結果は、Cu原子がSm-Co-Cu層中でSmCo_5相のCoサイトを占め、Sm(Co,Cu)_5を形成し、Cu-3d電子に由来する強磁性を発現していることを示唆するものである。
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