2006 Fiscal Year Annual Research Report
将来航空機の水素燃料タンク用複合材料の力学特性評価に関する研究
Project/Area Number |
18760611
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横関 智弘 東京大学, 大学院工学系研究科, 講師 (50399549)
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Keywords | 航空宇宙構造 / 複合材料 / 水素燃料 / 極低温燃料タンク |
Research Abstract |
航空機の環境適合性向上技術の1つとして水素燃料使用が挙げられるが、航空機への搭載体積及び重量の観点から液体水素貯蔵タンクの軽量化、特に極低温複合材タンクの実現が技術課題である。極低温環境下における厳しい熱応力のため、複合材料の微視損傷やライナや接着構造の破壊が生じてしまい、厳しい荷重条件での軽量化要求と安全性要求の両者を満たす複合材タンク構造が求められている中で、本研究では構造破壊の主要原因となる熱膨張ミスマッチの低減を目的として、チラノ(SiC系)繊維を使用した複合材料のタンク構造への適用性評価を実施した。 力学特性は炭素繊維に匹敵し、熱膨張係数は比較的樹脂に近いチラノ繊維と、極低温での靱性に優れる高靭性エポキシを選定し、それらを組み合わせたプリプレグから一方向繊維強化複合材料を試作し、非破壊検査により品質に問題ないことを確認した。製作した複合材料の一方向材及び面内擬似等方性積層材について弾性率、強度、層間破壊靱性、熱膨張係数などの力学特性を常温において取得した。極低温特性に優れるとされる炭素繊維エポキシ複合材料と比較して、弾性率・強度は及ばないものの、破壊靱性は同等以上であった。さらに、繊維方向と繊維垂直方向の熱膨張係数差は低減しており、接着材やライナ材料との熱膨張ミスマッチが解消されていることを確認した。 また、代表的な極低温複合材タンクとしてアルミライナ複合材タンクを取り上げ、内圧と温度変化を受けるタンク構造の応力解析を実施し、アルミライナ複合材タンクの致命的な破壊モードであるライナ/複合材間の剥離進展に関する破壊力学的な検討を実施した。チラノ繊維複合材を使用した場合に、炭素繊維複合材に比べ、剥離進展に関するエネルギー解放率が低減していることを確認し、極低温タンク構造への適用性に関する初期検討を実施した。
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