Research Abstract |
都市ごみ溶融スラグを土木資材として有効利用するために,溶融スラグと一般の土木資材の環境リスクを比較する研究を行った。特に本年は,都市ごみ溶融スラグ中の重金属含有量のばらつきについて調査した。関西地区の自治体の廃棄物溶融炉から排出される溶融スラグを,数ヶ月間に渡って,毎週1回サンプリングした20種のスラグ試料に対し,蒸留水による溶出試験(環告46号法),強酸による抽出量試験(環告19号法),王水分解による金含有量試験を行って,Cr, Cu, Ni, Pb, Cdの濃度の変動を調査した。 スラグ中のCr, Cu, Niの全含有量は,溶融スラグ排出時のメタルの混入に強く影響を受けており,メタルの混入によって,金属含有量はCrで2〜5倍,Cuで5〜70倍,Niで20倍以上となった。Pbの含有量は,ほぼ正規分布を示していたが,突発的に高い値を示すことがあり,変動係数は他の元素と比べて最も高かった。 重金属類の溶出量は全てのスラグ試料で有効利用のための基準値を下回っており,統計解析の結果,この溶融炉から発生するスラグは,99.9%以上が溶出基準を満足すると考えられた。 一方,強酸抽出量では基準を超過したスラグが見られた。Pbの強酸抽出量について統計的に解析すると,平均値を異にする2つの母集団があることが示唆された。これは,スラグの原料となる焼却灰中のPb濃度の違いに起因すると思われた。各母集団では,その濃度は正規分布をしていると考えられたが,濃度の異なるスラグの存在が示されたことから,現在の強酸抽出量を把握する公定試験方法(環告19号法)では,サンプリング方法によっては,強酸抽出量を過小評価や過大評価をする可能性かおることが示され,サンプリング条件を明確に規定する必要があることが分かった。
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