2006 Fiscal Year Annual Research Report
高経年化原子炉圧力容器鋼の照射硬化におけるマンガン影響の抽出
Project/Area Number |
18760654
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠田 竜太 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助手 (20335227)
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Keywords | 原子力エネルギー / 金属物性 / 照射効果 / 原子炉圧力容器鋼 / 照射硬化 / 照射脆化 |
Research Abstract |
本研究では、原子炉圧力容器(RPV)鋼の照射脆化の評価・予測の高度化・高精度化に貢献するために、RPV鋼及びモデル合金の照射硬化挙動やマトリックス損傷形成過程に及ぼすMnの影響について着目し、RPV鋼の照射硬化におけるMn影響の抽出を総合目標としている。今年度は、以下の2つの研究項目を実施し、中性子照射したFe-Mn系モデル合金における照射硬化のMn量依存性やマトリックス損傷形成挙動を系統的に明らかにするとともに、イオン照射したFe-1.5Mnモデル合金とRPV鋼(A533B)の照射硬化挙動がほぼ一致するという、興味深い結果を得ることが出来た。 1.中性子照射したFe-Mn系モデル合金の照射硬化と微細組織発達挙動を明らかにするために、平成17年度までにJMTR照射を施した試料について、照射硬化及び微細組織発達挙動におけるMn濃度依存性を調べた。引張試験により、照射硬化に及ぼすMn影響がFe-0.1Mnでは発現せず、Fe-1.0Mn及びFe-1.5Mnでは顕著に見られることが明らかになった。また、透過電子顕微鏡組織観察により、Fe-1.5Mnにおいては、微細な転位ループの形成が促進されていることが明らかになった。 2.Pure Fe、Fe-1.5Mn、A533B鋼に対して、イオン加速器システムDuETを用いてFeイオン照射を実施した。照射温度は290℃、照射量は最高1dpaである。超微小押し込み硬さ試験機によって、照射硬化の照射量依存性を調べたところ、Pure Feの照射硬化は約0.1dpaにおいて飽和傾向にあるのに対して、Fe-1.5MnとA533B鋼は1dpaまで上昇傾向を示した。また、Fe-1.5MnとA533B鋼の照射硬化量は、0.1dpa以上において、Pure Feを超えるとともに、両者の照射硬化量はほぼ一致し、A533BにおけるMn影響が示唆された。
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