2006 Fiscal Year Annual Research Report
米国WTC同時多発テロ後のステークホルダー参画型の復興プロセスと都市空間の変容
Project/Area Number |
18769006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Special Purposes
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Research Institution | The Great Hanshin-Awaji Earthquake Memorial Disaster Reduction and Human Renovation Institution |
Principal Investigator |
近藤 民代 (財)ひょうご震災記念21世紀研究機構, 人と防災未来センター研究部, 主任研究員 (50416400)
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Keywords | 災害復興 / 復興計画 / 都市再建 / 市民参加 / 討議型都市計画 |
Research Abstract |
本研究の対象は、2001年9月11日に米国のワールドトレードセンター(WTC)を襲った同時多発テロ(以下、9.11災害)後の再建である。公的機関として設立されたロウアーマンハッタン開発公社(LMDC)が調整機関となり、ニューヨーク州、ニューヨーク市、港湾公社、市民、民間企業、市民団体、などの多様な主体が参画して、利害や再建への価値観を討議しながら再建を進めているプロセスにその特徴がある。9.11災害後の再建のベクトルは災害に強いまちではなく、この災害を契機としてどのような都市空間を再編するかという方向に向かって進められている。同じボリュームのオフィス床を供給するか、神聖な場所として公共空間として保存するか、犠牲者を追悼するメモリアルを建設するか、商業開発だけではなく住宅開発に軸をおいた複合開発を目指すかなど、各主体によってさまざまな価値観が存在している。今年度は、第1に計画策定の手続きおよびプロセスに焦点をあて、多様な主体がどのようなプロセスで計画策定を進め、そこでの価値観が計画にどのような影響を与えたかについて明らかにした。建築家やプランナーで結成された中間支援組織が再建においてどのような役割を果たしたかについて分析している。第2に、再建計画のプロセスに関してベリー(1992)、ウェブラー(1995)、イネス(1999)らが提唱した討議型都市計画の規範に基づいて、9.11災害後の再建プロセスを評価している。対象とした計画は、WTC敷地における国際競技で選考されたリーベスキンドによる計画(2003年2月)までの計画案の変遷である。研究の方法であるが、再建にかかわった建築家協会(AIA)、都市計画家協会(APA)、地域計画協会(RPA)、ロウアーマンハッタン地区のB.I.D、ニューヨーク市芸術家協会、コミュニティ委員会などに対して2006年9月にインタビュー調査を実施している。以下に結論を示す。 ロウアーマンハッタンにおける討議型の都市計画においては大規模市民集会によって出された再建に向けての意見市民の声がLMDCによって公表された初期案を白紙撤回させ、それが国際コンペにおけるガイドラインの作成の基礎となった。これを可能にしたのは成熟した市民社会と討議型都市計画を推し進めた専門家による中間支援組織の存在とコミュニティ委員会などの平時の都市計画の仕組みがある。ただ、討議型都市計画における課題も見えてきた。それはロウアーマンハッタン開発公社に権限を持たせることなく調整機関にとどめたため、実質的にはニューヨーク州に意思決定権限が集中したことである。LMDCや地元自治体のニューヨーク市に期待される役割である再建プロセスへの市民参加と多様な主体間の利害や価値観の調整は、中間支援組織によって補完されたとみることができる。彼らは討議型都市計画を促進したと同時に、市民の再建への想いやビジョンなどに加えて専門的知見からの技術的なインプットを提示することによって、多様な主体による計画の合理性、総合性を高めたとみることができる。
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Research Products
(2 results)