2008 Fiscal Year Annual Research Report
窒素降下量増加はモンゴル草原の植生および遊牧活動にどう影響するか?
Project/Area Number |
18770016
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
衣笠 利彦 Tottori University, 農学部, 助教 (80403377)
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Keywords | 窒素降下物 / 乾燥草原 / 一次生産力 / 植生 / 遊牧 / モンゴル / 嗜好性 / 牧養力 |
Research Abstract |
本研究の目的は、モンゴル草原において人工的な窒素散布実験を行い、近年地球規模で進行する窒素降下量の増加が、(1) モンゴル草原の一次生産力および植生にどう影響するのか、(2) その変化が当地域の主要産業である遊牧にどのような影響を与える可能性があるのか、(3) 過放牧によって裸地化した草原の回復にどう影響するのかを評価することである。2008年は2006年に設定したプロットにおける実験処理と定期調査を継続した。 2008年は多雨年であり、5〜8月の降水量は干ばつ年であった2007年のほぼ倍であった。そのため2008年の地上部生産量は、2007年の約5倍であった。窒素散布処理による効果には、降水量との交互作用が認められた。すなわち干ばつ年の2007年では、窒素散布処理によって地上部生産量が約1.8倍に増加したのに対し、多雨年の2008年では、約1.1倍であった。2007年は、窒素施肥によって、Artemisa adamsiiを中心とした家畜の嗜好性の低い種だけでなくその他の種の生産も増加していたのに対し、2008年は、窒素施肥によって嗜好性の低い種の生産量が低下しその他の種の生産が増加していた。この結果から、窒素降下物量増加にともなうモンゴル草原の地上部生産量の変化は降水量の年変動に左右され、それは地上部生産に対する降雨と降下窒素の交互作用効果が種によって異なっているためであると考えられた。多雨年は窒素降下量増加にともなう草原生産力の増加は小さいものの、嗜好性の低い種が減少するため牧養力は草原生産力の増加以上に増加する可能性がある。
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Research Products
(2 results)