2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヤブツバキ-ユキツバキ交雑帯における遺伝的変異の解明
Project/Area Number |
18770024
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
上野 真義 Forestry and Forest Products Research Institute, 森林遺伝研究領域, 研究員 (40414479)
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Keywords | 遺伝学 / ゲノム / 植物 / 進化 / 生態学 |
Research Abstract |
昨年度までにユキツバキとヤブツバキの交雑帯において遺伝的変異を解析し、各個体がどの程度までユキツバキもしくはヤブツバキの要素を持っているかを明らかにした。遺伝的分化は遺伝的浮動や集団の二次的な接触によっても起こるが、自然選択による可能性もある。特にユキツバキは多雪地帯に適応したと考えられる気孔の反応特性を持っているため、本年度はさらに解析を進めてユキツバキおよびヤブツバキとして特長つけられる遺伝的変異の中に自然選択の影響がどの程度あるのか解明することを目的にした。 本研究では比較的多数の遺伝マーカー(35個のEST関連の遺伝子座)を用いてデータが収集されたため、Beaumont and Nichols(1996)にもとづき解析を行った。彼らの方法ではヘテロ接合度とF_<ST> の関係について自然選択に中立である状態で期待される分布をシミュレーションにより導き、実際に観察された値と比較することで、中立から、ある確率でずれた挙動を示すマーカーを検出する。 その結果、ステップワイズ突然変異モデルでのシミュレーション結果と比較すると3個の遺伝子座が95%信頼区間から外れていた。これらの遺伝子座のデータは自然選択に対して中立であると仮定すると稀なデータであり、実際に自然選択の対象となった可能性もある。これらの遺伝子座の塩基配列を蛋白質データベース(nr)に対してホモロジーサーチを行ったところ類似した配列を見出すことができたがその機能は未知であった。今後はこれらの候補遺伝座について塩基配列情報も加えた詳細な解析が望まれる。
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