2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18770053
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
後藤 慎介 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (70347483)
|
Keywords | 光周性 / ナミニクバエ / 光受容 / 光スペクトル |
Research Abstract |
多くの昆虫は光周期を季節情報として用い、短日下で休眠に入ることで不適な季節を乗り切る。また、いくつかの昆虫では休眠の終了にも光周期が重要な役割を担っている。このように光周期に反応する性質を光周性と呼ぶ。光周性には光周期を感受する光受容器、光周期の日長あるいは夜長を測定しその回数をカウントする光周時計、神経・内分泌系による出力系が関与していると考えられるが、その実体はいまだに不明である。 本研究ではハエ目昆虫、特にナミニクバエSarcopbaga similisを対象とし、光周性に関わる分子の特定を目指した。 ナミニクバエは光周期に制御された蛸休眠を示す。ワンダリング幼虫(摂食を終了し、蛹となる場所を求めて激しく動き回る段階)を水に濡れた条件(水処理)に保持すると幼虫期間が延長され、この間め光周期感受性は鋭敏になる。この水処理の間に暗期の光中断実験を行ったところ、暗期の前半と後半の2つの位相で長日の効果(休眠回避)が得られることが明らかになった。さらに、この2つの位相にさまざまな波長の高光量子数の光を与えたところ、暗期の前半では青や近紫外光といった短波長に対して感受性が高いこと、暗期の後半ではより広範囲の波長(近紫外から赤)にも反応することが明らかになった。そこで、その感受性を詳細に検討するため、光量子数を段階的に低くして与えたところ、暗期の前半は特に青に感受性が高いこと、暗期の後半も低光量子数のもとでは短波長の光に感受性が高いことが示された。ただし、それぞれの位相で反応の鋭敏さは異なり、暗期の前半はより低い光量子数の光にも鋭敏に反応する。以上の結果から、ナミニクバエでは、暗期の前半と後半では光受容が大きく異なること(光受容分子の種類や光受容後のカスケードなど)が考えられる。
|