2006 Fiscal Year Annual Research Report
時計遺伝子変異によるメタボリックシンドローム発症機構の解明
Project/Area Number |
18770057
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大石 勝隆 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物機能工学研究部門, 主任研究員 (50338688)
|
Keywords | 糖尿病 / 生理学 / 循環器・高血圧 / 発現制御 / 行動学 |
Research Abstract |
申請者らはこれまで、時計遺伝子Clockが、肝臓での脂質代謝系(特に脂肪酸代謝)に関わっている可能性を報告してきた。当該研究では本年度、個体レベルでの脂質代謝系におけるClock左遺伝子の役割を明らかにする目的で、脂肪細胞から分泌される食欲抑制ホルモンであるレプチンの欠損したob/obマウスと時計遺伝子Clockの変異マウスを交配し、Clock遺伝子の変異した肥満モデルマウスを作成した。申請者らはこれまで、ICR系統のマウスでは、Clock遺伝子の変異によって、高脂肪食負荷に伴う肥満が抑制されることを報告してきたが、今回のob/obマウスとの交雑実験の結果、C57BL/6とICR系統の遺伝的背景を有するマウスでは、Clock遺伝子の変異によってレプチン欠損に伴う肥満が促進されることが判明した。さらにCTスキャンによる体脂肪分布の解析から、このClock変異マウスでは、皮下脂肪よりもむしろ、メタボリックシンドロームに特徴的な内臓脂肪の選択的蓄積が認められた。脂肪細胞の肥大化について調べたところ、個体レベルの肥満度を反映して、ICR系統ではClockの変異によって肥大化が抑制される一方、C57BL/6系統では、Clockの変異によって脂肪細胞の肥大化が促進されることが判明し、脂肪細胞のサイズの変化は、個体レベルでの脂質代謝を反映しているものと考えられる。メタボリックシンドロームや関連する肥満や糖尿病などの病態においては、血栓傾向となることが知られている。申請者らは、血液の凝固線溶系律速因子であり、その血中濃度に顕著な日内リズムが認められる線溶系阻害因子PAI-1に着目して、時計遺伝子との関連についての研究を行った。マウスにおける血液の凝固線溶因子の遺伝子発現、タンパク質発現、活性について日内変動を調べ、時計遺伝子Clock及びCry1/2の変異マウスとの比較を行った。その結果、線溶系因子の内、顕著な日内リズムを有しているのはPAI-1のみであり、その日内リズムは、遺伝子の転写レベルで時計分子によって制御されている可能性が示された。更に申請者らは、培養細胞を用いた研究により、時計分子CLOCKが直接結合してPAI-1遺伝子の発現を制御している領域の同定に成功した。さらに前述のob/obマウスとClock遺伝子変異マウスとの交配実験により、肥満に起因した血栓傾向には、時計分子CLOCKが重要な役割を担っており、CLOCKの変異したマウスでは、レプチン欠損による肥満が促進されたのにもかかわらず、血液中のPAI-1抗原量は低値を示し、血栓傾向が認められないことが判明した。
|
Research Products
(7 results)