2006 Fiscal Year Annual Research Report
裸子植物と被子植物の胚珠構造の比較に基づく被子植物の起源に関する研究
Project/Area Number |
18770072
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山田 敏弘 金沢大学, 自然科学研究科, 講師 (70392537)
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Keywords | 胚珠 / 側生器官 / AINTEGUMENTA / グネツム / YABBY / カラザ |
Research Abstract |
被子植物のモデル植物の1つであるシロイヌナズナで同定された胚珠形成に関与する遺伝子のうち,AINTEGUMENTA(ANT)相同遺伝子(GpANTL1)を裸子植物のグネツム(Gnetum parvifolium)より単離し,その塩基配列(2005塩基対)を決定した.次にグネツムの胚珠原基でのGpANTL1の発現をin situ hybridization法を用いて観察したところ,珠心,珠皮,内被,外被原基でシグナルが観察され,それぞれの発現組織は独立していた.これまでの研究から,グネツムと近縁な裸子植物であるマツ科のANT相同遺伝子は,内被または外被と相同な珠鱗と珠皮の共通原基全体で発現することが知られている.マツ科を含む針葉樹目では珠皮とその他の葉的器官の癒合が化石記録から明らかになっており,グネツムとマツ科のANT相同遺伝子の発現様式の違いはこの側生器官の癒合を反映していると推定された.一方,シロイヌナズナのANTは,内珠皮(珠皮と相同)と外珠皮(葉的器官)を形成するカラザ全体で発現することが知られている.この発現が暗示する意味をマツ科とグネツムにおいて推定された側生器官の癒合とANT相同遺伝子の発現部位の関係から類推すると,被子植物においても外珠皮と内珠皮の間に癒合が過去に生じた可能性がある.このような癒合過程は「被子植物が一部のシダ種子植物から進化した」とする系統仮説を支持する(日本進化学会2006年大会,2006年8月,東京で発表).また被子植物において珠皮形成に関与するYABBY遺伝子を裸子植物,単子葉植物から単離し,その一部を用いてYABBY遺伝子族内の系統関係を明らかにした(Hirayama, Yamada, et al., in press).現在グネツムでのYABBY遺伝子の発現解析を進めている.
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Research Products
(2 results)