2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト脳由来環状化ヌクレオチドホスホジエステラーゼの構造機能解析
Project/Area Number |
18770096
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
阪本 泰光 昭和大学, 保健医療学部, 助手 (00349036)
|
Keywords | 生体分子 / 蛋白質 / 脳・神経 / プロテオーム |
Research Abstract |
オリゴデンドロサイトに局在する酵素であるヒト脳由来膜結合型2'3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジェステラーゼ(2',3'-Cyclic Nucleotide 3'-Phosphodiesterase,以下CNPと略)は神経軸索中に見出されるタンパク質であるが、生理的機能の手がかりについての知見はほとんど得られていない。2003年にCNP遺伝子を欠損したマウスが作製された。このマウスのミエリン鞘は正常に形成され成体にまで成長するものの加齢に従って神経軸索が消失していくことが病理的解剖結果から示唆された。(Lappe-Siefke et al., Nature genetics,2003) これらのことから、CNPは神経軸索の形成ではなく、神経軸索の維持またはエネルギー供与のような機能に関与していることが考えられる。本酵素の立体構造を明らかにし、生命現象の一端を解明すべくX線結晶構造解析を進めている。 本研究では神経軸索の維持に関与するCNPについて、多発性硬化症などの神経性疾患との関連性を分子レベルで検討し、その知見から生命現象の一端である神経軸索維持機構の解明及び神経性疾患の新たな治療法開発等に役立てるため、CNPに関する構造生物学的研究を行う。 具体的には、 (1)膜結合領域を含めたCNP全長の立体構造を決定する。 (2)2'-AMP,3'-AMP等の阻害剤との複合体の立体構造を決定する。 これらの立体構造に基づき、 (a)2量体蛋白質であるCNPと細胞膜とのインターフェースにおける相互作用。 (b)触媒ドメインと膜結合領域の相対配置、立体構造を基にした、CNPの分子機構。 (c)種々の阻害剤との結合情報に基づいた詳細な触媒機構 (d)オリゴデンドロサイトの神経軸索維持機構 を明らかにする。 これまでに、CNP触媒フラグメントの立体構造を明らかにした。CNP全長の結晶化条件の探索を行ない、微小結晶が得られたものの、回折データ収集に十分な大きさと分解能、結晶性に優れた結晶が得られておらず、さらなる結晶化条件の探索を行っている。
|