2006 Fiscal Year Annual Research Report
シトクロムcの翻訳後修飾を行うタンパク質システムの作用機構の解明
Project/Area Number |
18770102
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内田 毅 北海道大学, 大学院理学研究院, 助手 (30343742)
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Keywords | ヘムタンパク質 / 共鳴ラマン / シトクロムc / 翻訳後修飾 / チオエーテル結合 |
Research Abstract |
シトクロムcは電子伝達蛋白質であり、原核生物から真核生物までほぼすべての生物が有する蛋白質である。補酵素としてヘムを有し、そのヘムはシトクロムcのCysとチオエーテル結合を形成している。このチオエーテル結合の形成は自発的には不可能で、大腸菌の場合、Cytochrome c Maturationと呼ばれる8個以上の蛋白質(CcmA〜CcmH)からなる非常に精巧な分子機械が行う。in vitroの実験において、CcmEがヘムの挿入とチオエーテル結合の形成が可能である、という報告があるが、その詳細は明らかではない。そこで本研究は、CcmEによるシトクロムcの過程を分光学的手法を用い、明らかにすることを目的とした。 初めに、CcmEの発現、精製系の最適化を行った。培養条件による発現量の変化が大きく、培養する容器の大きさや蛋白質の発現誘導物質を加えるタイミング、誘導後の培養時間、回転数などを細かく検討し、最適な発現条件を見出した。 精製したCcmEに、酢酸中、塩化銀で処理し、ヘムを除去したシトクロムcを加え、窒素置換後、ジチオナイト、DTTを各2mMに加え、その後、吸収スペクトルを観測した。反応開始と共にCcmE由来の400nmのピークが消失し、2時間後に415nmに新たなピークが現れた。このピークの位置は還元型のシトクロムcのピークの位置に近いが、Qバンド(500-550nm)と呼ばれるは還元型のシトクロムcに特徴的な吸収帯の形が全く異なっていた。また、還元型のCcmEとも異なるスペクトルであった。つまり、今回観測された415nmに吸収をもつものはCcmEでもシトクロムcでもなく、ヘムが引き渡される際に現れる中間体と思われる。以上のことから、ヘムはCcmEから完全に解離した後、シトクロムcに移動するのではなく、CcmE、ヘム、シトクロムcの三者による複合体を形成し、輸送されることが初めて示すことができた。
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Research Products
(1 results)