2006 Fiscal Year Annual Research Report
回転分子モーターF1-ATPaseの回転機構解明に向けた1分子熱力学
Project/Area Number |
18770140
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
古池 晶 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (60392875)
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Keywords | 1分子計測・操作 / タンパク質の構造・動態・機能 |
Research Abstract |
ATP駆動の回転分子モーター、F1-ATPase(F1)は、α、βサブユニットが交互に並んで形成された筒の中心に、回転軸であるγサブユニットが突き刺さった構造を持つ。3つのβは、それぞれATP活性部位を持ち、ATPの結合、ATPの加水分解、分解産物(ADPと燐酸)の解離、という化学反応が順に行われ、それがγの回転を引き起こす。化学反応がどのようなメカニズムで回転運動に変換されるのかを理解する事は、生物学的にも物理学的にも興味深い。幅広い温度範囲(4-70℃)において、光学顕微鏡下でγの回転運動を観察できれば、今まで得難かったそれぞれの化学反応過程の熱力学パラメーターを求める事ができる。蛋白質1分子の熱力学的側面から回転メカニズムに迫る事が本研究の目的である。その実現のためには、(1)サンプルの温度制御、(2)高速度撮影、(3)幅広い温度範囲で観察可能な試料調整の3つの課題を克服しなければならない。(1)と(2)を同時に実現させるために、レーザー暗視野照明を用い、新規に温度制御装置を設計・作成した。(3)、回転運動の観察には、F1分子のガラス基板上への固定と、γサブユニットへ目印を付ける事が不可欠である。従来ブロッキング剤として使用していた牛血清アルブミンをポリエチレングリコール(親水性高分子)に置き代えることによって、高温での試料の安定性を実現できた。現在、4-65℃において、直径40nmの金粒子をγの回転の目印とし(水からの粘性抵抗はほぼ無視できる)、毎秒32,000駒の高速撮影で回転観察が可能となった。この測定からF1の回転速度が室温では〜160回転1秒であるが、65℃では〜2000回転1秒、4℃では〜20回転/秒と、温度によりダイナミックに変化する事がわかった。また、〜10℃を境に化学反応の律速過程が入れ替わる事が示唆される結果も得られた。19年度も、引き続き詳細な測定・解析を行う。
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