2007 Fiscal Year Annual Research Report
回転分子モーターF1-ATPaseの回転機構解明に向けた1分子熱力学
Project/Area Number |
18770140
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
古池 晶 Waseda University, 理工学術院, 講師 (60392875)
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Keywords | 1分子計測・操作 / タンパク質の構造・動態・機能 |
Research Abstract |
F1-ATPase(F1)は、ATP駆動の回転分子モーターである。それぞれ3つずつのα、βサブユニットが互い違いに並んで筒状の固定子(α3β3リング)を形成し、その中心に回転子のγサブユニットが深く突き刺さっている。βのATP活性部位では、ATPの結合、加水分解、分解産物(ADPと燐酸)の解離という化学反応が順に行われ、その化学反応サイクルの段階に応じたダイナミックなβの構造変化が、γを一方向へ回転させると考えられている。化学エネルギー(ATP加水分解)を、運動エネルギーへと変換する熱機関と見做し、一分子のF1の回転速度(エネルギー変換の速度)や回転トルク(運動エネルギーの出力)の温度依存性を調べることによって、熱力学的見地から、そのエネルギー変換の仕組みへの理解を試みた。 好熱菌(至適温度〜65℃)由来のF1を用い、適当な大きさの目印をγに付けることによって、その回転運動を光学顕微鏡下で観察した。新規の温度制御装置の設計・作成と、従来のレーザー暗視野照明の改良によって、試料の温度制御(4〜65℃)と高速度撮影(毎秒32,000駒)の両立が実現された。小さな金粒子(直径40nm)を目印にすると、回転の際に水から受ける粘性抵抗がほぼ無視でき、室温では〜160回転/秒、65℃では〜2000回転/秒、4℃では〜20回転/秒と、温度によりダイナミックに変化する事がわかった。特に〜10℃以下の回転速度の変化は顕著で、温度減少に伴い急激に減少した。回転トルクは、γに0.49μmのビーズを付け、そのビーズに働く粘性抵抗から求めた。4〜50℃の温度範囲で回転トルクの値にほとんど変化は見られなかった。 これらの結果から、F1は、熱浴の温度変化によって反応サイクルの速度が100倍も変化するにも関わらず、サイクルあたり(1個のATP消費)の出力はほとんど変化しない熱機関であることがわかった。
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Research Products
(8 results)