2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞の増殖と停止・分化における核ー細胞質間タンパク質輸送機構の役割
Project/Area Number |
18770182
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小瀬 真吾 独立行政法人理化学研究所, 今本細胞核機能研究室, 研究員 (90333278)
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Keywords | 核-細胞質間分子輸送 / importin / 分化 |
Research Abstract |
核-細胞質間の選択的輸送は、主に運搬体importin βファミリー分子によって行われる。ヒトゲノムには、全21種importin βファミリー分子と、アダプター分子として機能するimportin αファミリー分子が全6種コードされている。しかし、これらの多様な輸送経路を細胞が持つ生理的意義は明らかになっていない。本年度は、細胞機能と輸送経路の関連性を解析するため、分化誘導や増殖停止に伴う核-細胞質間分子輸送システムの変化を解析した。 急性前骨髄性白血病由来のヒト細胞株HL-60を、PMAもしくはレチノイン酸(RA)により、それぞれマクロファージと顆粒球に分化誘導した。この時、細胞内importin βファミリー分子のmRNA発現量変化をリアルタイムPCRによって解析した。その結果、分化誘導に伴う細胞機能変化により、細胞内輸送経路網の量的バランス変化が確認出来た。この各運搬体分子のmRNA発現量変化は、分化誘導の方向性によって異なっていた。例えば、マクロファージへの分化誘導により、transportinの発現亢進とimportin 5,CASの発現量が顕著に低下するが、顆粒球への場合には、これらの遺伝子の顕著な発現量変化は確認出来ず、RanBP6の発現亢進とimportin 4の発現変化が確認された。 これらの結果は、細胞内では、細胞機能変化に伴い、ダイナミックな輸送経路システムの変化が起きることを示している。また、その輸送経路システム変化は、獲得する細胞機能によって異なっていた。これらのことから、細胞は、個々の細胞機能の獲得や維持のために細胞内輸送経路網を最適化している可能性が考えられ、また、特定の輸送経路によって運搬される分子が特定の細胞機能に非常に重要である可能性を示唆している。
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