2007 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストンアセチル化阻害因子JDP2の細胞分化における役割とその分子機構
Project/Area Number |
18770185
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中出 浩司 The Institute of Physical and Chemical Research, 遺伝子材料開発室, 協力研究員 (20392053)
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Keywords | 老化 / 分化 / 癌 / 転写 / エピジェネティック / 細胞増殖 / senescence / 脂肪細胞 |
Research Abstract |
高等生物の細胞ではヒストンのメチル化やアセチル化などの修飾にともなうクロマチン構造変化により遺伝子発現パターンの変化が起こり、細胞の分化、老化及び癌化が誘導される。このヒストンのアセチル化を制御し、細胞分化および細胞増殖抑制に関与するとされる転写因子の一つにJDP2(Jun dimerization protein 2)がある。我々はJDP2欠損(JDP2KO)マウスを作成し、JDP2KOマウスから調製した胎児繊維芽細胞(MEF Jdp2-/-)を用いた脂肪細胞分化系をモデルとしてJDP2の細胞分化への影響を評価し、JDP2が生理的発現レベルにおいて脂肪細胞分化に対して抑制的に働くことを報告した。また、MEF Jdp2-/-は野生型のもの(MEF wt)と比較して老化が遅れ長期間増殖可能であることも見出された。JDP2は細胞老化による増殖停止(Senescence)に関与すると考え、リアルタイムRT-PCR法により遺伝子発現を解析したところ、MEF Jdp2-/-では細胞増殖抑制因子であるp16ink4aとp19arfの発現が抑制されていた。また、クロマチン免疫沈降法によるDNAへの転写制御因子の結合やヒストンメチル化の解析を行った。一般に若い細胞ではp16ink4aとp19arf遺伝子座にPRC1,2と呼ばれるヒストンメチル化酵素が結合しヒストンH3リジン27残基(H3K27)のメチル化によりp16ink4aとp19arfがエピジェネティクに転写抑制されているが、MEF Jdp2-/-においては長期培養後でもPRC1,2の結合量と、H3K27のメチル化が保持されていた。以上の研究よりJDP2の細胞老化における役割が解明されつつあり、将来的にはJDP2の発現制御を介した医用工学への応用となる基礎研究として位置づけている。
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