2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヤマトヒメミミズ再生過程におけるマトリクスメタロプロテアーゼの機能と発現制御機構
Project/Area Number |
18770190
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
遠藤 哲也 北海道大学, 大学院理学研究院, 博士研究員 (90399816)
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Keywords | 再生 / マトリクスメタロプロテアーゼ / 神経 / 環形動物 / ヤマトヒメミミズ / 進化 / 両生類 / MMP |
Research Abstract |
本研究は、動物の組織・器官再生のメカニズムを進化学的側面から解析し、その共通性・多様性について考察することを最終目標とするものである。 研究開始時点で、神経依存性が報告されている動物の中で、最も原始的動物であった環形動物・ヤマトヒメミミズから、マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)遺伝子を単離した。MMPは両生類の四肢再生では神経依存的発現パターンを示すことが分かっている。これまでに単離済みであった2つのMMPに加え、本年度は第3のMMPを単離することに成功した。先の2つのMMPは分泌型であったが、3番目のMMPは細胞膜貫通型であった。予想される遺伝子全長のほぼ半分に当たる3'側配列を決定し、現在は5'側配列の決定を試みている。単離された順に、暫定的にMMP-a, b, cと名付けた。 これらの遺伝子発現をin situ hybridization法によって調べたところ、MMP-a, bは遅くとも再生開始から3時間後までに、切断面付近の間充織様の細胞で発現を開始していることが分かった。その後MMP-aは再生6時間目までに、MMP-bは再生1日目までに切断面付近での発現量を低下させ、消失していた。このことからMMP-a, bは、非常に初期の段階で再生に関与しているが予想される。両生類の四肢再生では、再生初期から再生中期の傷表皮においてMMP発現があることから、ミミズと両生類四肢再生では、MMPの発現時期は似ているものの、発現領域は、表皮と間充織で逆転していることが分かった。 この他、両生類の脳再生に関する過去の研究をまとめ上げ、英文総説を執筆した。両生類の脳再生においてもMMPが重要な役割を果たしている可能性を導き出し、MMPが、環形動物(ミミズ)から脊椎動物(両生類)まで幅広い動物種が持つ再生の共通メカニズムを体系的に理解するためのキー分子となりうることを示した。
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