2006 Fiscal Year Annual Research Report
文化進化モデルを用いたヒトの非適応的行動に関する研究
Project/Area Number |
18770217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井原 泰雄 東京大学, 大学院理学系研究科, 講師 (90376533)
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Keywords | 文化進化 / 名声 / 配偶システム / 雄による子の世話 / 雌の多重交配 / 配偶者選択 / 性的刷り込み様現象 |
Research Abstract |
1.Ihara & Feldman(2004)の枠組に立脚し、N個体の社会学習者からなる無性生殖集団における繁殖、文化伝達、社会的地位の獲得、および死亡の過程を記述する連続時間モデルを構築した。高地位者は他個体に対する影響力が低地位者よりも大きいことを仮定した。モデル解析により、コストをともなう名声追求行動(社会的地位獲得率の増大と繁殖率または生存率の減少をともなう行動)をうながす価値観や信念が、文化伝達によって集団に侵入する条件を求めた。この結果、社会的地位の高低と名声追求行動の有無との間に生じる相関により、コストをともなう名声追求行動が集団に侵入しうることが示唆された。 2.雄による子の世話と雌の多重交配の共進化を扱った従来のモデル(Ihara 2002)を拡張し、新たに二つのモデルを構築した。一方では雌の配偶者選択を導入し、他方では雄の父性に応じた世話の調節を導入した。モデル解析の結果、これらの要因がいずれも雄による子の世話と雌の多重交配の進化に影響を与えうること、また平衡時における集団の配偶システムが、これらの要因を考慮しない場合と比較して異なるものになりうることが示された。 3.ヒトにおける性的刷り込み様現象(配偶者選択における選好性が幼少時に親密に過ごした個体の表現型に依存する現象)について検討するため、以下の実験を行った。恋愛関係にある未婚男女13組の顔写真、男女それぞれの幼少時における両親の顔写真、および対照となる男女の顔写真を用いて、被験者に顔の類似性を評価させた。この結果、恋愛関係にある男女の顔は対照となる男女に比べ相互に類似していることがわかった。この知見は既婚男女の顔写真を用いたBereczkei et al.(2002)と一致する。一方、先行研究と異なり、男性の母親の顔と女性の顔や、女性の父親の顔と男性の顔の間に類似は見られなかった。
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Research Products
(1 results)