2006 Fiscal Year Annual Research Report
社会性アブラムシの兵隊階級にみられるゴール修復の分子基盤の解明
Project/Area Number |
18770222
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 磨也子 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物機能工学研究部門, 研究員 (90415703)
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Keywords | 社会性昆虫 / 兵隊階級 / モンゼンイスアブラムシ / ゴール修復 / 体液凝固 / フェノール酸化酵素前駆体カス |
Research Abstract |
真社会性種のモンゼンイスアブラムシの兵隊幼虫は、捕食者によって巣にあけられた穴を自分の体液で修復するという自己犠牲的な「ゴール修復」行動を示す。兵隊の角状管から放出された多量の分泌液は、その後次第に固まり、穴を完全に塞いでしまう。本研究課題では、生物現象として非常に興味深いゴール修復行動について、分子基盤を解明することを目的に、特になぜ分泌液が凝固するのかということに着目して、タンパク質および脂質レベルからの解析を行う。 本年度はタンパク質成分の解析を中心に行い、分泌液を構成する主要なタンパク質成分6種の同定に成功した。これまでの研究から、そのうちの一つはメラニン合成に関わるフェノール酸化酵素(PO)であり、ゴール修復過程において昆虫生体防御反応であるフェノール酸化酵素前駆体(proPO)カスケードが活性化していることがわかっていた。本年度は、PO酵素の組織局在解析および全長cDNA配列の決定を行った。また、その他5種のタンパク質についても様々な解析を行い、内部に繰り返し配列をもち、グリシンやセリンなどに富むタンパク質である可能性を示唆する結果を得た。このタンパク質については未知の点が多く残されているが、proPOカスケードにおける酵素反応の基質である可能性、すなわちメラニンが合成される酸化反応の過程でこれらのタンパク質が架橋され、強固なタンパク質層を形成している可能性が考えられた。一方、ゴール修復を植物(ゴール)側からも調査したところ、兵隊分泌液による修復後1ヶ月以内には、ゴール壁の傷周辺の細胞層が伸張し、穴が完全に覆い隠されることがわかった。このことから、兵隊分泌液はゴール組織が再生するまでの「かさぶた」の役割を果たしていることが示唆された。 本研究成果は、国際学会を含む3つの学会で発表され、いずれも高い評価を得た。
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