Research Abstract |
本年度は,実験室レベルでの自律神経機能の検査法の検討と,フィールドレベルでの自律神経機能の実態調査を実施した。 自律神経機能の検査法では「寒冷昇圧試験」にも焦点をあて,ODとの関連について調べたが,両者が強い関連を示すことがわかった〔藤岩秀樹,石尾潤,中村貢治:"からだの学習"教材研究-自律神経機能の簡易検査法についての検討-,宇部工業高等専門学校研究報告,第53号,73-77,2007〕。我々がこれまでに多用してきた「体位血圧反射」もODと強い関連を示すことが既に知られており,今後,両者の結果を対応させることで,「体位血圧反射」の特性がより明らかになるものと考えられた。 フィールド調査においては,体位血圧反射法を用いた自律神経機能の実態調査を海外において2度実施した。この内,中国・北京市内の子どもを対象にした調査(2006年5月7〜10日)では,対象者703名の内,血圧調節良好と判定されたものは257名(36.3%),血圧調節不良(以下「不良群」)と判定されたものは446名(63.4%)であった。各年齢での「不良群」出現率は6〜7割程度であり,日本の1984年の調査結果とほぼ同様の結果であった。また,これらは日本の1956年の調査結果に見られるような,加齢とともに「不良群」の出現率が減少していくという傾向がみられないことから,現代の中国の都市部における子どもの自律神経機能も発達できないでいる状況にあることを確認した〔藤岩秀樹,野井真吾,正木健雄,鳥羽泰光,賈志勇,斉建国:中国・北京市における子どもの自律神経に関する日中共同調査報告,学校保健研究,Vol.48,Suppl.,500-501,2006〕。なお,中国・雲南省における生活の現代化が進んでいない山岳地域の子どもを対象にした調査(2006年9月14〜22日)の結果については,現在分析中であり,今後,公表の予定である。
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