2008 Fiscal Year Annual Research Report
縄文時代以来の農耕地雑草の多様性変化と人間活動との関係
Project/Area Number |
18780014
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
那須 浩郎 The Graduate University for Advanced Studies, 葉山高等研究センター, 上級研究員 (60390704)
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Keywords | 雑草 / 多様性 / 考古学 / 植物 |
Research Abstract |
最終年度である本年度は、1) 現在の水田における雑草群落と埋土種子群集の多様性の関係に関する調査の追加データの収集を行い、2) 特に文献資料から縄文時代および弥生時代遺跡の植物種多様性変化の解析を実施し、研究を総括した。 1) 初年度より継続実施している神奈川県葉山町の谷戸水田、滋賀県下之郷遺跡における古代米復元水田に加えて、本年度は埼玉県入間市の西久保谷戸水田での調査を実施した。ここは葉山の谷戸水田と比ベて大規模な谷戸に造られた水田であり、水田の片面は森林斜面に接しているが、片面は茶畑に接する。このような周辺環境の違いが水田内埋土種子群集に影響を及ぼすのか、調査した。その結果、森林斜面に接する側の水田内では森林要素の種子が多数堆積していたが、森林から離れた畑に接する水田内では森林要素の種子はほとんど堆積していなかった。このことは、水田遺構内の埋土種子群集は、当時の水田内の雑草群集のみではなく、周囲の森林や畑の環境をも反映することを示している。これまでの結果を総合すると、現在の水田表層土壌に含まれる植物種子の種数は、現在の水田周辺の雑草および野草、樹木の種数を80パーセント程度反映していることが明らかになった。 2) この結果をふまえて、主要な縄文時代と弥生時代遺跡における植物の種数変化を見てみると、縄文時代の遺跡よりも弥生時代の遺跡から出土する植物の種数が、ほぼ倍近い値に増加していたことが明らかになった。弥生時代前期に伝来した水田稲作農耕という新たな土地利用形式により、撹乱環境が増加し、そこに生育する一年生草本の種数が増加したことが原因であると考えた。最近、農業が環境を破壊するとよく言われるが、実際に日本列島で水田稲作農耕を受け入れた時点では、集落単位においては、逆に植物の多様性は増加していた。
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Research Products
(6 results)