2006 Fiscal Year Annual Research Report
マメ科植物と根粒菌の共生における一酸化窒素の新しい機能の解明
Project/Area Number |
18780031
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
九町 健一 鹿児島大学, 理学部, 助手 (70404473)
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Keywords | 一酸化窒素 / ミヤコグサ / 根粒菌 / 共生 / 窒素固定 / 植物ヘモグロビン |
Research Abstract |
1.ミヤコグサの根にミヤコグサ根粒菌を接種すると一酸化窒素(NO)が発生する。NO発生を引き起こす菌体成分の同定や発生量の経時変化の追跡のためにはNOを定量化する必要がある。そこで根で発生するNOの定量法の確立を試みた。いくつかの方法を検討したところ、次の方法が最もよい結果が得られた。数本の根を付け根から切り取り、バイアル瓶に入れる。7μMのdiaminofluorescein-FM(DAF-FM)を200μL加え、暗所で30分振とうする。NOは容易に細胞膜を透過するため、この間に細胞外に放出されたNOがDAF-FMと反応して波長515nmの蛍光を発するようになる。蛍光分光計ナノドロップによりこの蛍光を測定することによりNOを定量する。得られた定量値は顕微鏡観察の結果とほぼ一致したことから、本方法の妥当性が確認できた。 2.ミヤコグサのclass1ヘモグロビン遺伝子LjHb1はNOを除去する活性を持ち、根粒菌接種後の根および根粒中で発現が活性化される。Lの共生窒素固定おける役割を解明するために、TILLING法(targeting induced local lesions in genome)を用いてL遺伝子の突然変異株の探索を行った。5000系統のミヤコグサ変異株をスクリーニングした結果、18系統でL遺伝子内に突然変異が検出され、うち6系統がコード領域内の変異であった。6系統のうち2系統は同一のアリルであったため、最終的に5系統のL変異株の種子を得ることができた。このなかにはグルタミン酸からリジンおよびプロリンからセリンなどの性質の大きく異なるアミノ酸への変異が含まれていた。様々な植物のclass1ヘモグロビンで非常に保存度の高い127番目のグルタミン酸に変異を持つ株も得られた。 3.根で発生するNOが根粒着生どのような影響を与えるかについてはこれまで直接的な検証が行われていなかった。そこで、NO発生試薬sodium nitroprusside(SNP)を用いてこの点について調査を行った。様々な濃度のNO発生薬剤SNPを含む寒天培地上で栽培したミヤコグサにミヤコグサ根粒菌を接種し、30日後に着生された根粒を数え、SNPを添加しないものと比較した。その結果、100μMのSNP添加では3分の1、150μMのSNP添加では10分の1に根粒着生数が減少した。また、SNPを添加すると根の生長が遅くなった。根粒菌接種により発生したNOは接種後24時間以内に消去されることが分かっている。今回の結果から、このようなNOの消去は正常な根の生長と根粒着生に重要な役割を担うことが示唆された。
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