2006 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫細胞へ慢性感染する新規RNAウイルスの遺伝子工学的機能解析
Project/Area Number |
18780034
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
岩永 将司 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (40400717)
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Keywords | 昆虫 / ウイルス / 植物 / 遺伝子 / タンパク質 / 培養細胞 / 慢性感染 / ベクター |
Research Abstract |
BmMLV(bombyx mori 'macula-like latent virus)は昆虫(カイコ)の培養細胞から発見された潜伏性の新規RNAウイルスであり、植物ウイルス様のゲノム構造を有する。つまり、本采は植物ウイルスとして何らかの宿主植物に感染するが、一方で昆虫の培養細胞においても増殖可能なウイルスであると考えられる。しかしながらBmMLVの由来や複製機構等は全く明らかでない。 そこで本年度はまず、BmMLVの由来を推定する為の感染実験を行った。その結果、BmMLVは単独ではカイコの食草であるクワ葉への感染性を有さない事、またカイコ幼虫へ経口感染しない事が明らかになった。つまりBmMLVが仮にクワ葉の植物ウイルスであるならば、何らかの媒介昆虫が存在するか、他の侵入機経路が存在する事を示唆した。次に、MLVがどの様な昆虫の培養細胞へ感染しているのか明らかにする為、抗MLV抗体を作製し各種培養細胞からのMLV検出を試みた。その結果、カイコ由来培養細胞の殆どに既にBmMLVが慢性的に感染しており、更にこれら各細胞由来のBmMLVのゲノム配列を解析した結果、相同性が極めて高いことも明らかになった。次に、既にBmMLVが感染している培養細胞ヘバキュロウイルス(NPV)を共感染した。NPVは、感染後約2日で宿主の殆どの遺伝子発現を阻止してしまう。その際、慢性感染しているMLVの遺伝子発現がどの様に変化するかを調べた結果、MLVの遺伝子発現はNPVによる制約を受けず、むしろ発現量を増していくことが明らかとなった。この結果は、MLVが独自の強力な遺伝子発現機構を有することを示唆し、現在これらの解析を更に進め、植物ウイルスの昆虫における潜伏感染機構の解析や、新たなウイルスベクターの開発を進めている。本年度の成果は投稿予定であり既に学会発表(3件)招待講演(1件)にて報告した。
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